「じゃあ、また来るよ。あっ、一人で店番大丈夫か?」
自分だって忙しいくせにオレの迎えに来たこの人は、ついには自分のテリトリーにいる相葉さんの心配までし始めた。
まるで彫刻のような端正な顔。
そのせいで冷たい印象を他人に与えることもあるこの人が、実はとても優しくて面倒見がいいってことは関わったことのある人にはすぐにわかることで。
「もうっ!
俺をいくつだと思ってんの?
早くニノを連れてってやってよ」
同い年に留守番の心配をされて、憤慨しているのかそれとも照れ隠しか、相葉さんがわざと素っ気なくシッシッと手を振る。
追い払われたオレたちは店の外に出た。
近くの駐車場に停められた社用車に乗り込みながら
「珍しいね、車移動なんて。
都内は電車な方が便利だって、いつも言ってなかったっけ?」
学生時代からの付き合いのせいで、およそ上司と部下らしからぬ態度も、もうどっちも気にすることもない。
「大御所先生をロケハンに連れてったんだよ。
東京中引き摺り回されたわ」
ウンザリという顔で自分の肩をもむけど
「あの先生のミステリー、オレ好き。
今度は東京が舞台なんだ?」
「まあな。
良いもの書いて貰いたいしな。
ロケハンぐらいいくらでも付き合うさ」
片方の口の端だけを上げてオレに向けられた瞳がキラリと輝った。
その顔がやたら決まってて、オレだけに向けられてるのが勿体ないような。
独り占めするのは贅沢だと思うのと同時に、他の人には見られたくないと思ったり……
仕事だって山積みだっていうのに
……最近のオレは心の方も何だか忙しい。
つづく