「かず!」


客のいなくなった『灯庵』の店内。
カウンターに寄りかかっって、オレと目が合うと嬉しそうに手を振る。


「こっちに来ちゃダメだって言ってるでしょ!
あなた自分の立場かってんの?」


こっちは真剣に言ってるのに


「もうお客さんいないし、大丈夫だよ。
それよりさ、この後のロケなくなったの。
今日はもうあがれるよ。かずは?」


早くあがれるのがよっぽど嬉しいのか、人の話なんて聞いちゃあいない。


「オレは…ここの始末と、奥の片付けもしないと」

「ニノさん、俺やっときますから、どうぞあがってください」


オレたちの話を聞いてる風情なんてまるでなかったのに、大吾が絶妙なタイミングで助け船を出してくれた。


「大ちゃん、ありがとうー」

「悪いね、大吾」

「いいえ、任せてください」


大吾に抱きつかんばかりに喜ぶ相葉さんと一緒に、オレも頭を下げる。
そんなオレたちにひたすら恐縮する姿を見ながら、それでも任せることに全く不安を感じない大吾の成長を頼もしく思った。


「あっ、まあ、一度ちゃんと家に帰ってよ」

「わかってる」


出来もしないウインクをすると、人がいない事を確認して店から出ていった。


オレは後を大吾に任せてエプロンを取ると奥の部屋へ、またその奥の扉を開けるとこのマンションのエレベーターホールに出た。


仕事の手を抜く気はないし店主としての責任もある。
だけど、オレにとって何よりも優先されるのはあなたの側にいること。オレの回りの人たちはそれをわかってくれてこうして助けてくれる。
感謝しかない。


エレベーターで上の階へ。
降りてすぐの部屋がオレの部屋だ。


暗証番号と指紋認証でキーを開けて部屋に入ると、オートロックが閉まるのを確認して洗面所へ。
手を洗っていると、部屋の隅のクローゼットの横の壁が音もなく開いた。


「かずちゃん」


このマンションとは背中合わせに建つ、ここよりも更に豪華なマンションに帰ったあなたが、すっかり素の顔でオレの前に立っている。


オレの住むマンションと隣のマンション。
エントランスも反対側で一見全然別の建物だけど、実はこの部屋と相葉さんの部屋は秘密の通路で繋がっている。


相葉さんは帰るのも出掛けるのも隣の建物だけど、生活は俺の部屋でしている。


こんな大掛かりなカモフラージュを考えたのは、櫻井さん、翔ちゃんと大野さんで。
翔ちゃんの提案を面白がった大野さんが、あっという間に自分の持ちビルを改装して、こんな忍者屋敷のような部屋を作ってしまった。


芸能人としての相葉さんは隣のビルで生活している。
もちろん自分の部屋に友達も呼べる。


そして、プライベートでは


オレたちは一緒に暮らしている。












つづく