ふうっ………


ひとつ息を吐いて、その扉に背を向けた。


飛ぶ鳥後を濁さず
オレはこの部屋の掃除に取りかかった。


食器の片付けをして、家中に掃除機をかける。
埃を払って部屋中を拭きあげる。
シーツやカバー類も取り替えた。帰って来たあなたが気持ち良く休めるように。





全部が終わると手を洗い、隠しておいた荷物を肩にかけた。
自分の靴を出して部屋の中を見回す。


うん、この数日間、楽しかった。
充分に幸せだった。
この記憶だけで、きっと笑って生きていける。


ありがとう


そしてオレは部屋の中に向かって深々と頭を下げた。


さあ、行こう


靴を履こうとしたその時
玄関扉の鍵の開く音がした。
あなたが帰ってきたのか?忘れ物でもした?
でも、最終リハーサルはとっくに始まっている時間。


手にした荷物を隠そうかどうしようかと迷っていると、その間に扉が開いて


「ほらジャストタイミング!」

「あっぶね、荷物持ってるじゃん」


賑やかな話し声とともに入ってきたのは


「……ユウリ……リョウスケ………」


別れた時より少し大人びた『PARADOX』の後輩達だった。


ハデだった髪も服装も随分と落ち着いて、何だか貫禄さえも漂わせる二人。


そう言えばユウリは完全に現役を退いて、大野さんの後継者としての修行中。
リョウスケも半分はユウリの手伝いをしていると言う話だった。


そんな二人が昔と変わらない笑顔をオレに向けて立っている。


「ニノさん、お久しぶりです」


ペコリと頭を下げるユウリの黒髪が揺れた。


「ちわー」


リョウスケがニカリと笑う。


そんな二人に、事態が飲み込めないオレは


「………なんで?」


その場に立ち尽くしてそれだけ言うのが精一杯だった。
そんなオレとは対照的に楽しそうにさえ見える二人は


「やっぱり芸能人の部屋は豪華だねぇ」

「大野さん家の方が高い物件だと思うけど?」

「そうじゃなくて、家具とかさ調度品とかさ、断然こっちの方がハイセンスじゃん」

「まあね、大野さん家は立派なのは入れ物だけで、中はテキトーだから」





「……お前達、何でここを知ってるの?
それに何しに来たの?」


玄関でハシャギまくる二人に、業を煮やして聞いた。
すると二人は、そうだったと今気が付いたようにオレに向き直り


「俺達大野さんに頼まれまして、相葉さんが帰ってくるまでニノさんを逃がさないように見張りに来ました」

「脱走防止のお目付け役です」


脱走防止って………


何だそれは!

   
         
     





    
                  

つづく