「いよいよ明日だね」


話題を変えようとして自爆する。
明日はオレとあなたの最後の日。
今一番思い描きたくない光景。
オレのそんな気持ちに気付かないあなたは、サラダのブロッコリーをポイッと口に放り込んで、このドレッシングもうまぁ、と頬を緩ませる。


「今日のリハーサルもバッチリだったから、明日は絶対上手くいくよ。
俺の勇姿、テレビで観ててね。
それで、帰ったら2人で乾杯しようね。
あっ、明日はさすがにお酒飲んでいいでしょ?」


「ふふっ、………待ってるよ」


あなたを安心させるための嘘をつく。
良かった。作った笑顔にあなたは気付いていない。


最後だから、楽しもうと思ってたんだけどな
どうしても心からの笑顔が作れない。


だけど、あなたの笑顔はオレの記憶に刻みたいから
だから、あなたは笑って
二人の明日を思って最高の笑顔をオレに見せて






明日に備えて早めに寝ることになった。


相変わらず同じベッドで、あなたの隣に横になって
あなたの寝顔を見て、あなたの寝息を聞いていた。


抱き込まれた腕は、あなたが寝入るとともに緩んで
あなたの胸に押し付けられた頭を、あなたの顔が見える位置へと這い上がった。






初めて会った日を思い出す
優しくて少し憂いを含んだ笑顔
かけてくれた言葉
ひとつも忘れていない
あの時から、あなたがオレの世界の総てになったんだ


あなたがゲストとしてあの部屋に来たとき、正直に罰ゲームだというあなたが、あまりにもオレが思い描いたあなたそのもので
そんなあなたに抱かれて幸せで
オレじゃないオレに熱くなるあなたが悲しかった


真冬の海でかずちゃんと呼んで貰った時
割烹着姿のオレと、リュウとしてのオレが同じだと知ってもあなたは何も変わらなくて
それが嬉しかった


好きだと言って貰って嬉しくて
本当は何も考えずにあなたの胸に飛び込みたかった……出来るわけないけど


潤くんの店に会いに来てくれた時も
冷たい態度しか取れなかったけど
本当は涙が出るほど嬉しかったんだよ


考えてみれば、オレはあなたに貰ってばかりいる。
何も返せなくてごめんね。


いつの間にか溢れた涙で視界が曇る。
だけど、まだあなたの顔を見ていたいんだ。
あなたとこんなに近くにいられることが特別過ぎて、今日も寝られる気がしない。
止まらない涙と闘いながら、いつまで見ていても飽きることの無いあなたの寝顔を眺めて夜が明けた。


空が白み始めた頃
最後だから許してね、と
あなたの薄く開いた唇にそっとキスをした。














つづく










つづく