ニノがあの日来なかった本当の理由。
それを知ったことで俺のニノへのわだかまりは消えた。
だけど、その後も俺がニノに連絡をすることはなかった。
あの日、あの駅で、俺とニノの道は別れてしまった。
そんな気がしていた。
過ぎた時は戻らない。
俺とニノもきっともう元には戻れない。
大学で学ぶ中で、俺は自分で物を作るよりも、その物や人、事柄をプロデュースすることの方に熱を持てることに気がついた。
じゃあ何をプロデュースするかと考えたとき、俺は生まれ育ったあの山合の町を思い出した。
高齢化が進み、過疎にあえぐ町。
焼き物に適した土が豊富にあって、環境も人材も揃っているのに世間には全く知られていない。
あの町を全国区に、新しい焼き物の町として押し上げる。
簡単じゃあない。
だけど、だからこそ遣り甲斐がある。
俺は俺の人生の目標を見つけて、卒業と同時に故郷に帰った。
陶芸家になるのが嫌で家を飛び出した、俺の新しい夢を親父は受け入れてくれた。
久しぶりに会った親父は一回り小さくなったような気がした。
帰郷してまもなく、偶然ニノに会うことがあった。
何しろ小さな町だ。
生活圏なんて限られている。
だから、いつかは会うこともあるだろうと思っていた。
ニノは、自身が継いだ店の割烹着を着て買い出しに来ていた。
「潤くん、帰って来たんだってね」
穏やかに口許に笑みを浮かべて、久しぶりにあった友達にかけるような言葉。
「うん。ニノは?買い出し?」
それは俺も同じ。
「うん。こんな格好、見られるのは恥ずかしいな」
「いや、似合ってるよ」
「ありがとう。じゃあ、仕込みしなきゃだから」
お互いの距離に気付きながらの、上っ面の会話。
俺たちの過去も無かったかのように。
親父さんのことにも触れられないまま。
ずっと微笑んでいたニノは、最後まで俺と目を合わせることはなかった。
俺を傷つけたと、あの日の自分を許せないでいるんだろう。
子供の頃からの付き合いの俺にはお前の気持ちが手に取るように分かる。
そして、見かけによらずお前が頑固なのも分かりすぎるほど分かっている。
だからこそ、
どうしたらお前が、俺に対して負ってしまった罪悪感から解放することが出来るのか、俺には分からないままだった。
次回は29日22時に更新します。