昨夜より、少しだけ歯応えのある飯を、今日もうまいうまいと言いながら食べたあなた。
「ごちそうさま、うまかったぁー
ねぇ、シャワー浴びたいんだけど」
「まだ熱が下がってないのに?」
「汗かいてきもちわるい」
「……じゃあ……お湯に浸かって、オレ付き添うから」
シャワーはかえって身体が冷えるから却下。
かといって湯船も熱のあるこの状態じゃあ心配で言っただけなのに
「いっしょに入ってくれるの?」
嬉しそうに身体が跳ねる。
「入りません!でも身体は洗ってあげるよ」
当たり前でしょ。
と突き放せば、分かりやすくしょげた。
いつまでも愚図るあなたを風呂場に連れて行って湯船に浸ける。
お湯の中で手足を伸ばして
「ああー、きもちいいー」
やっと機嫌が直った。
無類の風呂好きなあなただから、きっと体調にも良いはず。
オレはズボンの裾と腕を捲ってボディソープを泡立てた。
「疲れちゃうからあんまり長湯はダメよ。
身体洗ってあげるから、ここ座って」
風呂のイスを指差すと、ゆっくりと浴槽を跨いで言われた通りイスに座る。
時間をかけないように手早く全身を洗っていった。
「はーさっぱりしたぁ。
ねぇ、こんなシチュエーションだと、いけないことしたくなるよね」
頭を洗うオレをニヤニヤと見上げてくるけど
「ふふっ、口ばっかり、身体は全然その気になってないよ」
直に触れてるオレにはわかる。言葉とは裏腹にあなたの身体はすっかり弛緩してそんな緊張感は欠片も感じない。
「ううー、残念、せっかくのチャンスなのになぁー」
あなたも自分の状態がわかっているんだよね。
今のあなたにそんな体力も気力もないってこと。
「はいはい残念でした。
じゃあ、もう一回浸かって暖まったら出てきてね、髪を乾かすから。
そうしたらまた寝るんだよ」
軽くいなして促すと、言われるがまま湯船に浸かった。
それを見届けて、オレは先に風呂場から出ると、まず寝室を整えてバスタオルとドライヤーを持ってあなたが出て来るのを待った。
手櫛ですいてゆくあなたの髪は、濡れているのにサラサラでとてもさわり心地がいい。
ソファーに座らされてドライヤーを当てられているあなたは、目をトロンとさせて今にも眠ってしまいそう。
手に持ったペットボトルが落ちそうになって、慌てて取り上げてテーブルに置いた。
疲れきっているあなたの身体が睡眠を欲している。
ベッドに寝かせるとやっぱり手を握って欲しがった。
だけど、すぐに深い眠りに入ったあなたの手はするりとほどけてしまう。
離れてしまった温もりを寂しいと思う自分
あなたに触れるためにここに来たんじゃないのに
オレのやるべきことはあなたに休養と栄養を与えること。そして、環境を整えてあなたが気持ち良く過ごせるようにすること。
あなたが寝ている間にやることは山ほどある。
気持ちを切り替えようと両手で叩いた頬がパチンッと小さな音を立てた。
つづく