「……うっ、いててっ…………」
目を開けると部屋の中はうっすらと明るくなっていた。
ベッドに寄り掛かったまま眠ってしまったせいで、肩や腰が固まって、動かそうとするとギシギシと音を立てるよう。
一晩中握りっぱなしだった手はさすがに力が抜けていて、少し引くとスルリとほどけた。
間近にあるあなたの寝顔。
昨夜苦しそうだった呼吸は、今は安らかな寝息に変わっている。
少しは熱も下がったかな?
そっと額に手を当てると、平熱とまでは行かないけど昨日よりはだいぶ良さそう。
起きたらちゃんと熱を計らないと。
額に当てた手を滑らせて前髪をすいていると、ゆっくりと瞼が開いた。
ぼんやりとオレを見上げるけど、その瞳にオレは映っているのかいないのか
「起こしちゃった?」
そっと話しかけると、瞳を巡らせて視線が合った。
「……かずちゃん…ずっといてくれたの?」
かすれた声。
「いるって言ったでしょ?」
「うん。……おれ………ねむい……」
「もうひと眠りしたらいいよ。
あなた疲れきってるんだよ」
「……かえらないで…ね」
「こんなあなたを置いて帰れないよ。
大丈夫、ここにいるから」
「………うん………………」
嬉しそうに笑うと、目を閉じた。
ゆっくり休んで。
今のあなたには休息が一番。
次にあなたが起きるまでに朝飯の準備をしようと、音を立てないように寝室を出た。
昨夜はあまりにも時間が無さすぎて、不本意にもレトルトで済ませてしまった。
今日はちゃんと出汁から取って…
あの様子ならもう少し出汁の量を減らしても大丈夫かな。
それとも、軟らかめのうどんにしようか。
取り替えたシーツや、洗面所で山になっていた洗濯物を洗濯機に放り込んで、キッチンに戻って頭を巡らす。
朝飯を作りながら、荒れたシンク回りを片づけていく。
ゴミを纏め、洗い物をし、湯を沸かして、コンロに鍋を掛ける。
世話しなく動き回りながら、無意識に鼻唄を歌っている自分に気が付いた。
あなたは今病と戦って苦しんでいるのに
オレはあなたの看病をするためにここにいるっていうのに
オレの心は弾んでいた。
つづく