ワンボックスの車は、マンションの地下駐車場のエレベーターの前で止まった。
ここは住人とあらかじめ申請された車しか入ることが出来ない。
この用心深さに、櫻井さんの警戒心の強さが伺える。
まぁ、過去に車待ちでやらかしたのはオレだけど。
オレは車を降りると、ここに来る途中で寄って貰ったスーパーの紙袋を両手に抱えてそそくさとエレベーターに乗り込んだ。
ドアが閉まり上階へのランプが次々と点灯していくのを見るともなしに見ていた。
久しぶりではあるけれど、慣れた景色。
高層階で降りて廊下の突き当たりで、櫻井さんに渡されたカードキーを扉にかざした。
『眠っているかもしれませんから、そのまま入ってください』
とにかくあなたに負担をかけないようにと気遣う櫻井さん。
マネージャーがそこまで心配する程、あなたの状態は悪いのか。
自宅に帰っていると聞いて多少は安心したのに、別れ際に言われた
『どうか、相葉をよろしくお願いします』
櫻井さんの必死な表情が頭に残って、不安が甦ってくる。
もしもオレに手に負えない状態だったら、救急車を呼んでもいいか聞いておけば良かった。
眠れているのなら起こさない方がいい。
オレはそっと扉を開けると中に入った。
さすがに部屋の中は静まり返っていて、間接照明だろうかリビングから仄かな明かりが漏れている。
まずはあなたの容態を確認しなければと、リビングに入っていく。
すると、薄明かりの中で思いもよらない光景が目に入ってきた。
リビングの奥、ダイニングテーブルの側であなたが片手を腰に、まるで出勤前のサラリーマンのように栄養ドリンクを飲み干していた。
小ぶりのビンの液体を一気に煽って、プハァーッと息を吐く。その姿がまるでCMのよう。
今頃はベッドでグッタリしていると思っていたあなたの、思いの外しゃんとした姿に呆気に思わず固まるオレ。
すると、ドリンクのビンを掲げたままオレに気がついたあなたが、それこそCMのように爽やかに笑いかけてきた。
「かずちゃん!!やっぱり来てくれたんだね」
元気そうな姿。
まさか、倒れたってウソだったの?
あんなに心配そうにあなたをオレに託した櫻井さんの姿も演技だった?
だとしたら、やっぱりマネージャーなんかやめて役者にでもなった方がいいんじゃないの?
本気で心配したのに。
何だか腹が立ってきた。
「なによ。元気そうじゃない」
ニコニコとこっちを見ている呑気な笑顔に、余計に言葉が刺を持つ。
「看病なんか必要なさそうだね。
じゃあ、オレ、帰るわ」
腹立ち紛れに持っていた紙袋をドンッ!!とローテーブルに置いて玄関へと向かった。
「…あっ、ちょっと、待ってよ」
背中で弱々しい声がするけど、今さら病気のふりしたって遅いんだからね。
玄関で靴を履こうとしていると、後ろでガタンッと大きな音がした。
振り返ると、床に膝を着いたあなたがダイニングのイスにすがり付いていた。
こっちを見る目が弱々しく揺れている。
オレは反射的に駆け寄ってその身体を支えた。
熱い!!
触れたあなたの身体は、じんわりと汗をかいているのに、火の玉のように熱かった。
つづく
水曜日は更新出来ずにすいませんでした。
昨日は休みだったので、何とか書き直して下書き保存。微調整してアップしようとしたところまた消えて……
心が折れました……
おまけに読みにも行けなくなっていて、わたしの楽しみが( ノД`)…
その後復旧したようで、下書きも戻っていました。
今日もあまり調子が良くなくて、いつ消えるかとハラハラしながら書いています。
問題がなければ明日は予定どおりにアップ出来るはず!
二日続けてになりますが、よろしくお願いします。