開け放たれた引戸から寒気が流れ込んでくる。
それを招き入れた人が、またそれを塞き止めるように下り口を塞いでいた。
たっぷりと羽毛の入った、ラフだけど上質なコート。
裾から伸びる真っ直ぐな脚。
いったい何身等なんだと思わせる小振りの頭をサラサラの髪が纏う。
会うのは3年ぶりか
変わらない……
でも、あの時より髪が短くなって、少しだけ大人っぽくなった
自ら断ち切った関係
遠く離れた場所で、会いたくて
だけどそれは許される事ではなくて
その活躍を密かに追い続けて来た
その姿がゆっくりと敷居を跨いで、後ろ手で引戸を閉めた。
「寒いね」
ニコリと笑う。
まるで距離を感じさせない話し方はあの頃と変わらなくて
それでも
「髪、可愛いね。
坊主でも金髪でもない普通の髪型が、かえって新鮮」
あなたの言葉が、否応なしに時の経過を思わせる。
ここに来た時の金髪は染め直すこともなく、邪魔になるごとに切り落とされて、今は跡形もない。
それだけ時が過ぎたのに、なぜ?
オレがあなたを捨ててここに来た時には動かなかったのに
だから、諦めてくれたと
そう思っていたのに
またオレは芝居をしなきゃならないの?
あの、辛く悲しい芝居を……
「座っていい?」
さっさと上衣を脱いだあなたが、カウンターのオレの目の前のイスを引く。
「………何しに来たの?」
その気配だけを感じて、出来るだけ顔を見ないように言う。
そうじゃなきゃ、突き放すことが出来ないから
会いたかったのに
あの時、憔悴したあなたを置き去りにして、心配で…
その後も、液晶の画面に映るあなたを観る度に会いたくて……
精一杯の演技。
我ながらちゃんと不機嫌な言い方が出来たと思う。
それなのに「くふふっ」とあなた独特の笑い声。
その余裕は、あなたも変わったってことか。
「何しに?
そんなの決まってる。
かずちゃんを口説きに来た」
黒い瞳が真っ直ぐにオレを見詰めていた。
つづく