数日後、オレと潤くんは大野さんと『PARADOX』のキャストの何人かに見送られて、思えばずいぶん長い間過ごした都会を後にした。
別れ間際、大野さんは少しの間潤くんと向き合っていたけど、言葉を交わすことはなくて、その代わりオレに向かって
「元気でな」
という短い言葉とともに、途中で食べろとでもいうのか、弁当の包みを押し付けてきた。
「会いに来てね」
とオレが言えば
「わかったわかった」
と本当に分かっているのか、怪しい返事。
そんな大野さんにオレは
「絶対だよ!」
と念を押した。
オレにじゃなくて、潤くんに会いに来てよ。
オレとは違って、あなたたちの糸は切れてないんだからね。
大野さんと潤くんのことはオレが気にしたって仕方がないってわかってはいる。
けど、どうしても願わずにはいられなかった。
潤くんが借りたレンタカー。
トラックの荷台には二人分の荷物。
だけど、荷台はガラガラだった。
実家に帰る潤くんと元々荷物の少ないオレ。
持っていくものなんて、大してありはしない。
オレは助手席の窓から見えるビル群をぼんやりと眺めながら、ポケットの中のものをギュッと握り締めた。
初めてあなたに会った時に手を拭ってもらったハンカチ。
あなたとオレを繋ぐ物に見えて、再会するまで心の拠り所だった。
この機会に捨ててしまおうと何度も思ったけど、どうしても捨てられずに結局持ってきてしまった。
別れた相手の、しかも相手は覚えてもいないそれを、後生大事に持ち歩く……
「………キモッ」
自分のやっていること、に自分で嗤う。
「…ん?どうした?」
オレの呟きが聞こえたのか、ハンドルを握り前を見たまま潤くんが聞く。
「ううん、何でもない」
その問いに首を振った。
高速道路に乗った車はスピードを上げ、
徐々に変わっていく景色。
何本か橋を渡った頃にはビル群は遥か後ろ、目の前には開けた平地が広がっていた。
フフッ
考えてみれば、オレってもともとキモイ奴じゃん。
たった一言かけられた優しい言葉にすがって
勝手に生きる糧にしてみたり
まるで罠を張るように周囲からじわじわと近付いて行ったり……
オレがそんなんだから、きっとこんな結末なんだ
だけど、どうしても捨てられなかったハンカチ
この想いだけは持っていってもいいかな
オレが一人で前を向ける日まで、もう少しだけ支えて欲しい。
陰からあなたの活躍を見守らせて欲しい。
なんて
「……やっぱキモッ」
窓の外を見ながら、オレはクククッと嗤っていた。
つづく
先日は書けなくてすいませんでした。
待ってますと言ってくださった方、ありがとうございます。
でも、書いたはいいけど、こんな場面で大丈夫かしら(・・;)