テーブルの上で震え続ける携帯。
聞こえているはずなのに、あなたは動きを止めない。
何の躊躇もなくたどり着いた唇がオレの尖りに吸い付く。小さな突起の上で蠢く舌に
快 感が一気に駆け上がる。
……あっ、んっ………
熱を帯びる身体と、その一方で耳は鳴り止まないバイブ音を拾っていた。
ヴーヴーヴーヴー
ヴーヴーヴーヴー
「…………ねえ」
オレの背をきつく抱き締める腕。
音を無視してオレの身体に没頭しようとしている、胸元を擽る前髪を掻き上げた。
「……電話……出たほうがいいんじゃない?」
これからっていう時に、水を差すオレの言葉に見上げる瞳が抗議する。
抗うように続けようと、ほんの少し頭を押し上げているオレの手を握るために離れた身体。
二人の間に少しだけ距離が出来て、その間も鳴り続けるバイブ音。
一向に鳴りやむ気配のないそれに、あなたが思い切ったように頭を上げ、名残惜しくオレから離れた。
はぁっ、と小さなため息とともに。
ダイニングテーブルの上を音を立てながら小さく動き回る携帯を手に取ると多少乱暴に画面を指で叩いた。
「…………えっ………だけど…………うん……うん………………わかった」
ソファーに身体を起こしたオレに背を向けて、小さな声で答える。
やがて、元あった場所に携帯を置いて戻ってきたあなた。
「……電話、誰から?」
普段なら電話の相手なんて絶対に聞いたりしない。
だけど、あなたを見ていればわかる。それはオレにも関係のある内容。
「………翔ちゃん。マネージャーからだった。
映画のね、スタッフさん達と飲んでるんだって。
それで、俺も来れないかって……」
「……そっか、じゃあ早く行かないとね」
立ち上がり身支度を始めたオレに、慌てて
「でも、仕事じゃないんだよ。
それに、こんなことめったに無いのに」
帰らないでってあなたの顔が言ってる。
オレにはそれだけで充分。
「映画のスタッフさんなら仕事絡み。めったにない大事な事だからマネージャーさんもあなたを呼んだんでしょ?
ほら、あなたも着替えて」
言いながら空き缶をシンクに持って行く。
水道で中を洗い始めたオレの背中で
「でも、送っては行くからね!」
駄々っ子のような声と必死な顔。
そんな顔しないでよ。オレだって本当は帰りたくない。無理して物わかりのいいふりをしてるのに、そんな顔を見たらますます帰りたくなくなってしまう。
「オレは一人で帰れるから、だから…」
「そんなに遠くない!
かずちゃんを送り届けたらそのまま行くから。
……だって、せっかくのタクシーデートなんだもん」
オレの言葉を遮ってこれだけは譲れないって、大事な仕事相手が待ってるのに。
だから、あなたのその気持ちだけで充分嬉しいの。きっと何を言っても引かないあなたのために、今オレに出来ることは
「それなら尚更早く出掛けないと。タクシー呼んで?」
わざと甘えた声で先を促した。
つづく