大野さんは、オレと潤くんの話を一言も口を挟まずにじっと聞いていた。そして
「そうか、じゃあ、『PARADOX』は正式に引退だな」
そう笑って言ってくれた。
「大野さん……」
「もともと相葉さんに逢うためにやってた商売だ。
外で逢えるようになったんなら、もうやる必要もないしな。
おつかれ。今までありがとう」
オレの頭に乗せた手がくしくしと髪を掻き回す。
怒るのかと思ってた。
なのに
相葉さんに会うためにここを利用していたオレに、ありがとうだなんて…
不覚にもじんっと来てしまった。
気付かれないようにスンッと鼻を啜ると、頭の上に乗っている重さの分だけ肩を竦めた。
「で?ニノはこれからどうすんの?
相葉さんとこに行くの?」
真面目に聞いてくるから
「えっ?何でそうなるの?
今だって、時間がある時にたまに会うだけだよ。
ぜんぜんそんな事になってないよ」
慌てて首を振った。
「そうなんだ。
じゃあ、うちの家政夫続けてくれる?」
にんまり笑っている。
「もちろん!
オレの収入源もうこれだけだから、クビにされたら食っていけない。
これからも宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げるオレを不思議な物を見るような目で見ていた潤くんが
「ホントに何にもないの?
だってあんなに頻繁に予約入ってたのに。
もう、お互い身体の隅々まで知り尽くしてるでしょうよ。今さら清いお付き合いもないだろう」
潤くんは、オレが大野さんの部屋を出るまでずっと首を傾げていた。
自分の部屋に戻ってシャワーを浴びる。
頭を拭きながら冷蔵庫から出したミネラルウォーターのキャップを開けた。
グイッと飲み込むと、温まった身体の中を冷たい水が流れて行くのがわかった。
やっと大野さんに言えた。
そして認めて貰えた。
やっぱり大野さんに隠し事をするのは辛くて、
言えたことで心が軽くなった気がした。
今度相葉さんと会うときは、今までと少し違った気持ちで会えるかもしれない。
オレは……
相葉さんと二人で歩く未来に希望を持ち初めていた。
つづく