あなたは、忙しい仕事の合間に時間を作ってオレを誘い出してくれた。
食事に行ったり映画に行ったり、いわゆるデートを繰り返す。
人目につくことを気にするオレに
「大丈夫、ご飯は個室を取ってるし、映画もね、暗くなってから入れば結構気付かれないんだよ」
平然と笑っている。
「うちに寄っていかない?」
何度目かのデートの後あなたに誘われた。
最後にあなたとあの部屋で逢ってから随分経つし、そろそろそんな誘いが来るんじゃないかとは思っていた。
あなたのオレへの気持ちはわかっているし、返事をしていないからと言って、拒む気もない。
だいたい、そんなの今さらだし…
心と身体は別物。
そう思わなきゃあんな仕事なんて出来ないし。
そこで出会ったオレたちだから、気持ちが繋がる前に身体を繋げたいって望まれるのなんて想定のうち。
なのに………
セキュリティのしっかりした高級マンション。
ドアを開けた先には、適度に片付いて適度に雑然としたやたら居心地のいいリビングで
「これ借りたの。一緒に観ようよ」
座り心地のいいソファーに湯気を立てるコーヒー。
目の前の大型テレビには少し前に大ヒットしたアクション映画が流れている。
隣で目を輝かせながらヒーローの活躍に見入るあなたを茫然と見上げた。
ここ、あの部屋と同じ密室だよ?
ついこの間まで熱く狂おしく熱を分けあった相手と、身体の片側を密着させていて、あなたは何とも思わないの?
こんな中学生のデートみたいな
そんなのであなたは満足なの?
オレ、そんなに魅力なかったかな?
全くその気にならないあなたに、最後はそんなことまで考えた。
余計なことが頭の中をぐるぐると回っていたせいで、ほとんど映画の内容が入ってこなかったオレとは対照的に
「あー面白かった」
エンドロールを眺めながらうーんと伸びをしたあなたがオレには笑いかける。
「くふふっ、口尖ってるよ。不満?」
不満ではないけど、戸惑ってはいる。
あなたにはその理由もわかっているようで、急に真剣な顔で身体をオレに向けた。
二人掛けのソファーで向かい合う。
「かずちゃん。
俺は今『PARADOX』のリュウちゃんといるんじゃないから。
告白して返事待ちの大好きな子と一緒にいるんだからね。
自分勝手にかずちゃんのこと抱いたりしないよ。
いくらかずちゃんがいいって言ってもね」
「お人好しなの?それともバカなの?」
憎まれ口を言っていないと涙が出そうだった。
オレのことを、そんなに大事にしないで
オレにはそんな価値なんてないのに
刷りきれたぼろ雑巾のような身体のオレを
心だけじゃなくこんな身体まで大事にしてくれようとする、あなたの心の綺麗さに余計に自分の醜さが浮き彫りになるようで……
「かずちゃんも俺のこと好きって言ってくれたら、心置きなく抱かせてもらうけど?」
優しく包み込むように見詰めながら言われても
………オレには返事が出来なかった
つづく