オレが話している間、あなたは黙ってオレを見ていた。
そして、一通りオレの話しが終わった後、ポツリと言った。
「ねぇ…今日は、このままでもいい?」
それは、わざわざここに来て、シないということ?
「……ワタシはかまわないけど…………」
高額な料金を払っているのに…
シないからといって支払いはなくならない。
あなたは、
それでもいいの?
「今日はスるより、話したい。
愚痴になっちゃうかもしれないけど……」
「いいよ。聞くよ」
今日はあなたの心の内側を見せてくれるというの?
あなたが必要としているのがオレの身体だけではないようで……
何の力も持っていないオレでも、少しでもあなたの心を軽くしてあげられたら……
こんなに嬉しいことはない。
並んで座ったオレより高いところにある、あなたの頭を抱き寄せた。
あなたはオレの肩に凭れたまま、ポツリポツリと話し始めた。
常にスポットライトの中心にいるあなた。
強い光は濃い影を生む。
発した言葉は時として歪められ、真意を正す術もなく他人に伝えられる
信じた人に裏切られることもある
誰が味方で誰が敵かそんなことまで目まぐるしく変わる世界の中
渦巻く嫉妬や羨望、怒り悲しみ屈辱……
そんなもの全てを飲み込んで笑うあなたの苦しみが、穏やかに話す口からポロポロと溢れる。
オレは、時々相づちを打ちながらあなたの話をひたすら聞いていた。
時々あなたの頭を撫でながら………
あなたがオレに見せてくれる影。
それでさえ嬉しかったから。
心の澱を吐き出して少しはさっぱりしたのか
やがて、ほんの少し笑顔を取り戻したあなた。
「さっきのこと、翔ちゃんに相談してみるよ。
あっ、翔ちゃんは俺のマネージャーなんだけどね、すごくかっこ良くて、一緒にいるとどっちがタレントかわからないってよく言われるの」
その、イケメンマネージャーのことを思い出しているのか、くふふっと独特の笑い声。
「うちの社長がね、翔ちゃんもデビューさせようとしたことがあったんだけど、カメラの前に出るのは絶対に嫌なんだって」
「…そうなの」
オレがあなたのマネージャーの顔を知っているのを悟られないように短く返事を返す。
「かっこ良くて、賢くて、超仕事が出来て、でもとっても優しい人なんだよ」
その口調からあなたがどれだけその人を信頼しているかがわかる。
あなたの側にはそんな人がついていたんだ。
……だったら、俺なんかの出る幕はない。
近づいたと思った距離は……
またあっけなく離れていく……………
「きっと会えばリュウちゃんとも気が合うと思うよ」
なんだかね、二人似てる。とオレを見ながら今はここにいない彼と見比べるような素振り。
そんなすごい人とオレが似ているわけがないのに……
「…だけど、会わせてはあげないよ」
「なんでよ」
「あんな非の打ち所のない人に会わせて、リュウちゃんが翔ちゃんのこと好きになっちゃったらイヤだから」
急に低くなった声音と、うひゃひゃといたずらっぽい笑い。
ねぇ、それは、どういう意味?
だけど、あなたはそれ以上その事に触れることなくこの部屋を出て行った。
「これ以上したら、帰れなくなっちゃう」
そんなキスをオレに残して……
つづく