『PARADOX』のキャストとしての仕事は出来ない。
だけど、もし、相葉さんから連絡が来るとしたら、それはここしかない。
だからオレはここを離れるわけにはいかない。
そんなオレに、潤くんは
「おまえ考え甘くねぇ?
仕事もしないのにここに置いてくれって。
ここ、都心の一等地だぜ?いくらワンルームつったって、普通に家賃払ったらいったいいくらすると思ってんの?」
一見厳しいようだけど、潤くんの言ってることは何も間違ってない。
ここは『PARADOX』の社員寮みたいなもんで、だからキャストは破格の家賃で住まわせて貰ってる。
本来ならオレたちみたいなのが住める場所じゃない。
だけど、どうしてもオレはここから離れるわけにはいかないんだ。
すがるように大野さんを見る。
「大丈夫。ここにいな」
そんなオレに大野さんは何でもないことのように言ってくれたんだ。
「大野さん、ニノに甘すぎ」
潤くんが呆れたように首を振る。
別に潤くんはオレに意地悪をしてるわけじゃない。
ここの仕事をしながら、ラーメン屋で修行もしている潤くんは世間の厳しさを知っているだけ。
言ってみれば、オレや大野さんの方が非常識なんだ。
「『PARADOX』のリュウは完全にいなくなったわけじゃない。一人限定だとしてもキャストはキャスト。
でもまぁ、稼ぎは落ちるから……
そうだ、ニノ、ここの家政夫やれ。
俺のメシの世話と洗濯、ここの掃除。
あー、ゲストやクライアントが来るときは、絶対出て来んなよ。万が一リュウのファンと鉢合わせでもしたら、俺が困る。
もっともここに呼ぶことはほとんどないけどな。
それでいいだろ?」
「えーーー!
大野さん、俺の作るメシはもうヤダってこと?」
得々と語った大野さんに潤くんが抗議する。
「そうじゃねぇよ。
ただお前は昼も夜も働いてる。その上俺の世話までやいて、確実にオーバーワーク。
そのうち倒れるぞ」
「俺、身体は丈夫だから全然平気なのにー
じゃあ、ニノに俺の飯も作って貰う。
それでここで一緒に食う」
「だそうだ。
ニノ、潤の分もよろしく!
そんで、お前もここで一緒に食う。
どうだ!いい考えだろ?」
大野さんは自分の思い付きに満足そうだけど
「……いや、オレ、包丁は……」
「別に料亭の飯作れっていうんじゃねぇ。
普通の、カレーとかでいいんだよ。
うちの包丁は両刃だぜ。
左手なら包丁持てるだろ?
それとも、怖くて持てねぇ?」
「……あれ以来、料理はしてないからわからないけど……
……いいよ。やる。
その代わり期待はしないでよ?」
「よし決まった!」
話をまとめて、大野さんはくたびれたと言ってソファーに寝転んだ。
そんな大野さんを見る潤くんの眼差しにも気付くはずもなく……………
つづく