シャワーの音が止んでバスタオルを腰に巻いたあなたが出てくる。
時間が迫っているのはあなたも気付いているね。
「もう、帰らなきゃ……」
「明日も、お仕事でしょう?
ワタシには構わず……
あっ、着替え手伝いましょうか?」
あなたを前にすると、自分が仕事中であることを忘れてしまう。
慌てて立ち上がろうとしたところをまたしても止められて
「……大丈夫だから。
疲れたでしょ?……って言うのも何だか……
……恥ずかしいね?
でも、まだこの部屋にいられるなら、休んで行って」
はにかみながら言って、あなたは身支度を整えるためにもう一度シャワールームに入っていった。
オレは浮かしかけた腰を再びソファーに沈めて、ただあなたが出てくるのを待っていた。
カチャリ
シャワールームのドアを開けて出てきたあなたは、もうここにいる為のあなたではなくて、
外に出ること、人に見られることを意識したあなたは芸能人の相葉雅紀を醸し出していた。
バスローブのまま、ソファーに座るオレの前に来たあなたが
「今日はありがとう」
柔らかく笑う。
ここに来た時の固さがなくなっただけでも良しとしなければならない…のかもしれないね。
オレだけのあなたの時間が終わる。
いや、あなたがオレのものになったことなんて一瞬もないけど
この部屋の中でだけはあなたはオレだけを見ていてくれたはずだから
すでに出口の扉を気にかけるあなたに伸ばしそうになる手を堪えて笑顔を作る。
「…それは、こちらのセリフです。
ありがとうございました」
「……じゃあね」
サラサラの前髪をグッとかき上げてキャップの中に押し込み、そのキャップのつばを目深に下ろしたあなたが扉に向かって歩き出す。
オレは立ち上がることもなくその場で広い背中を見送った。
本当なら出口の扉まで見送らなければならないのに。
立ち上がったらすがり付いてしまいそうで
行かないでと言ってしまいそうで
動くことが出来なかった。
あなたは重い扉のノブに手をかける直前、振り返って
「リュウちゃん×××」
バイバイと小さく手を振ると扉の向こうに消えた。
パタンと扉の閉まる音。
その音を聞いて初めて伸ばしていた背中から力が抜けた。
ズルズルと背凭れに崩れ落ちて天井を見上げる。
ふふっ……ふふっ
あのひとに………
相葉さんに抱かれた……
こんなオレをあのひとは抱いてくれた
思っていた通り、あのひとはやさしい人だった
やさしくて、あたたかくて、まっすぐで……
オレの思った通りのひとだった
あなたに見つめられ、あなたのあたたかい手で触れられた
あなたの猛りを受け止め、その胸に抱きしめられた
無機質な真っ白い天井を見つめる、その目尻から止めどなく涙が零れ落ちていく
……ふふっ
……………最後の望み、叶っちゃった……………………
つづく
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予約投稿のため、現在8:00ちょっと前
雨風ともに激しくなってきました。
ご心配くださった方、ありがとうございます。
高台なので浸水の心配はないのですが、
風が、怖い。
昨日と今朝のうちに出来る用心はしたので、あとは何事もなく通りすぎるのを祈るのみです。
皆さまのところは大丈夫でしょうか、
大きな被害が出ないといいのですが。
10:00過ぎ、嘘のように静かになりました。
明るくなってみないとわからないけど、今回は大丈夫だったようです。