どう見たってコーヒー牛乳にしか見えないカップを機嫌よくすすった大野さんが隣の潤くんを見る。


「そんときのニノの顔が必死でさぁ、
他に生きる理由が見つからない。
なんて言われたらさあ、放り出すわけに行かないじゃん。
回りがどんなにくだらないと思ったって、ニノにはたったひとつの希望なんだからさ」

「くだらなくて悪かったな。
それに希望なんて綺麗なもんじゃないよ。
ただ……あの人に抱かれてみたいって思っただけ……
そのためにここまで来たけど…
気が付いたらオレの身体はあの人以外の男の手垢にまみれてた。
もう、あの時の二宮和也です、なんて言えなくなっちゃった」


考えないようにしてたのにな。
口に出してみれば嗤えてくる。


もとは純粋な想いなのに、いつの間にか目的のために上を目指す自分。
こんな汚れきったオレは『リュウ』という名前に閉じ込めてしまいたい。
あの人の中で『カズ』と『リュウ』が決して一緒にならないように。


なんて、あの人に会えるかどうかもわからないのにね。


「ニノは……いまでも?」


目を合わせようとしないオレに、潤くんの労るような声が落ちる。


「…それでも、あの人のぬくもりに包まれてみたい。
たった一度だけでいい。

金で買える男だと思ってもらっていい。
気の迷いでも、話のたねでも何でもいいんだ」

「おまえ、頭はいい方だと思ってたけど、実はバカだったんだな」

「なんとでも言え!」


ひとをバカだと言いながら優しい潤くんの声に、涙が出そうになって唇を噛んだ。








「だけど、あのルックスと知名度。
女に苦労してないだろ。そんなノーマルがここに来るか?」


オレの気持ちをわかってくれたのか優しい眼差しはそのままに、急に核心を突いてくる潤くん。
オレの目的を現実的に考えてくれてのことなんだろう。


「だから、あの人の周りの人間に近付いてるんだよ。オレの評判があの人の耳に入れば、もしかしたら……」

「もしかしたら………ね。
限りなく不可能に近いけどな」

「うるさいよ」

「いいんだよ。
それがニノを生かしてくれるんなら。
そのうち、他にやりたいことも見つかるかも知れねぇしなっ」


大野さんはやっぱり時間稼ぎでオレを置いてくれてたんだ。不可能を追いかけてる間に他の希望が見つかればいいって。
それが大野さんの優しさ。
わからなくはないけど、嬉しくもない。
オレには他の希望なんていらないんだ。


大野さんも優しい人だ。


どんなに指名を受けてもオレは目的外の人間はすべて門前払いをしている。キャストとしてはきわめて使いにくいだろう。
中にはクレームを言ってくる奴もいるし、その度に大野さんに負担がかかっているのも知ってる。
そんなオレの我儘を黙って許してくれる。


オレは自分のエゴのために、ここを利用してるっていうのにね。













つづく








今週も一回更新になってしまうかも。
もうちょっとだけ時間をくださいm(._.)m