その年、ニノは日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞した。
優秀主演男優賞ってことは、そのまま最優秀主演男優賞の候補になったってことで。
受賞の知らせが来てから、俺たちは密かに盛り上がってはいたんだ。
ただ、ニノの前で騒ぐわけにも行かず、それでもどうしても浮き足立つ空気は隠しようがなかった。
当事者のニノ以外は。
このところニノが沈んでいる。
あー、正確に言うと沈んでるんじゃなくて、つまんなそうなんだ。
理由もわかってる。
嵐の楽屋に相葉くんがいないんだ。
次のクールでのドラマの撮影が始まったのと、レギュラー番組で新しい相葉くんのコーナーが決まって、撮影ギリギリに入ってきて終わった途端に出ていく日が続いている。
嵐で集まっていてもまともに話をする暇もない忙しさだ。
そんなだから、ニノのマッサージも出来るわけもなくて、相葉くんに任命されてなぜかその役を俺が担っている。
相葉くんいわく
不器用な翔ちゃんには絶対にニノの体は触らせられない。リーダーは自分がマッサージしないからどこが効くかわかんないでしょ ⁉
そうなると、松潤しかいないんだよ~
だ、そうだ。
消去法かよ、おい!
俺だって暇なわけじゃないんだけど。
まぁ、いいけどさ。
相葉くんに引っ張って行かれてプロからマッサージのレクチャーも受けた。
で、楽屋でニノを寝かせて相葉くんの変わりにせっせとニノの身体をほぐす俺。
だけどさぁ、
相葉くんにされてるときはギャーギャー騒ぎながらすげぇ楽しそうなのに、俺だと超おとなしいの。
たまにため息なんかついちゃって。
「大丈夫?どっか辛いとかある?」
って聞いても
「大丈夫よ。悪いね、J にこんなことしてもらって」
って、俺に気なんか使っちゃって。
まぁ、わからなくはないけどね。
この時間はニノと相葉くんのコミュニケーションの時間だったんだろから。
マッサージに積極的なのは相葉くんだけど、ニノが密かに楽しみにしてるのもわかってたしね。
ニノは隠してるつもりだろうけど、俺たち3人はニノの気持ちなんてとっくに気づいてる。
だからって口を出す人間はここにはいない。
みんな大人だからね。
そっと見守ることに撤してる。
気付いてないのは当人達だけなんだ。
「相葉くん………」
翔さんがその名前を出しただけで、うつ伏せてるニノの肩がピクンと跳ねた。
「頑張ってるね。
バラエティーの新コーナーも自分で企画して提案したらしいよ」
楽屋の中、みんなに話しかけてるていで、実はニノに聞こえるように言ってるんだけど、気にかけてるのを覚られたくないのか、ニノは素知らぬふり。
翔さんは大野さんと俺を見て肩をすくめる。
「相葉くん、ニノには負けてらんないって言ってたよ」
今度ははっきりとニノに向かって翔さんが語りかけると、ニノも顔を上げて
「何を負けるっていうの。
意味がわかんない」
憮然としてる。
「ニノが凄く頑張ってて、賞も取っちゃうくらい結果を残してるからじゃない?」
翔さんが優しい顔でニノを見る。
「オレだけじゃない。
頑張ってるのはみんなも一緒でしょ。
あいつだっていつだって目一杯頑張ってる」
「そうだな。
だけど、ニノを見てたらもっと頑張りたくなったんじゃない?」
「自分で仕事増やして、そんなに丈夫じゃないのに、また痩せたし……」
会話のはずなのに、呟くような小さな声。
「結局、心配なんだ」
ニノの身体を擦りながら、我慢出来なくってつい言ってしまった。
「そんなこと!!」
弾かれるように身体を捩って俺を見上げて放った声が、思ったより大声で視線が自分に集まったのがきまり悪かったんだろう。
「…………ないし……」
蚊の鳴くような声で呟いて突っ伏した、その耳が真っ赤だった。
なにこの可愛い生き物。
思わず抱き締めたくなるけど、そこはガマンガマン。
これ以上刺激しないように、みんな必死で笑いをこらえていた。
つづく