『PARADOX』はそのセキュリティの確かさと
キャストの質の高さが売りの
男性専門のboy clab。
キャストの質とは、外見だけじゃなく、心身共に健康であること、接客も一流を要求される。
それだけに会費、接客料共に高額で、自動的に一部のセレブしか利用することが出来ない。
しかも一見さんはお断り。
その界隈では『PARADOX』の接待を受けることがある種のステイタスにもなっているらしい。
セレブになればやたらと気位の高いのや扱いづらい人間も多くなる。
そんなゲストを見事にさばいてここを取り仕切っているのが、目の前で幸せそうな顔して菓子パンにかぶりついてる大野さんだ。
とてもそうは見えないけど、かなりのやり手。
元はここのキャストだったのが、当時のオーナーに気に入られて、そのオーナーが引退するときにビルごと引き継いだらしい。
本人はあんまり自分のことを語らないから、うわさ話半分でどこまでが本当かは分からない。
まぁ、オレにはどうでもいいことだけど。
腹も満たされて、潤くんが淹れてくれたコーヒーでまったりする。
大野さんは腹が満たされると同時に瞼が重たくなっている。
眠られる前にオレは言っとかなきゃならないことがあるんだ。
「大野さん!
あのゲスト、キャストの扱い荒すぎだよ」
オレが部屋の中であったことを訴えると
「んーだけど、契約違反ってわけじゃあないんだよなぁ。ギリギリだけど」
「だけど、最後のキスは明かに違反だからね。違約金、ふんだくってよ!」
「わかったよ。
もう、だから最初っからクセが強いって言ったじゃん。名前聞いた途端、どうしても行くって言い張ったのはカズじゃん」
眠くなったせいか呼び名が変わってる。
「大野さん、それはやめてって言ったよね」
「んー?カズ?
だって二宮和也じゃん。
ニノだってカズだっておんなじこと……じゃん」
「同じでも、カズはいやなの!」
「大野さん、ニノは初恋の人に操を立てたいんだよ。わかってやんなよ」
「操を立てるなら…
こんな仕事……すんなよ」
「うるさいよ。
オーナーがこんな仕事って言うのかよ」
そんな操の立てかたあるかよ………
聞こえるか聞こえないかの呟きを最後に、大野さんはフカフカのソファーに沈んだ。
つづく