プルルプルルプルル……
ガランとしたワンルームに備え付けの電話が鳴る。
このコールしつこいんだよな
諦めるってことを知らないんだから
やっぱり 備え付けのベッドからもぞもぞと起き上がると受話器に手を伸ばした。
サンダルを引っかけてドアを閉める。
カードキーをかざすと、ピッという機械音が施錠を知らせた。
エレベーターでひとつ下の階に降りる。
表札のないその部屋のドアノプに手を掛けると、そのままドアが開いた。
「鍵くらい掛けろよ。無用心だろ。
あと、内線で呼び出すの禁止な」
上の階とはだいぶ違う広いリビングの大きなソファに寝転んでいる人に文句を投げた。
「だってニノが来るのわかりきってるのに、いちいち開けに行くのめんどくせーじゃん。
それに、携帯にかけたってマナーにしてて出ねーんだもん」
寝転がってはいるけれど寝てはいないらしい。この家の、いやこのビルの主がむくりと起き上がって、テーブルの上の包みをガサガサと広げ出した。
「ほら、メロンパン!
貰ったんだよ。こんなにいっぱい。
どうせメシ食ってないんだろ?
食って食って」
「いい歳した大人が何でメロンパンでそんなに喜べるんだよ」
確かに今日はまだペットボトルのお茶しか胃袋に入れてないけど。
俺より全然年上のくせに子供みたいな笑い顔に多少あきれながら、甘い匂いに引き寄せられるようにソファーに近づいていった。
すると、奥のキッチンからトレイに乗ったスープカップと一緒に出てきたイケメン。
彫りの深い顔立ちはまるで彫刻のよう。
迫力がありすぎて、初めて見たときは怖い印象しかなかった。
「そう言うなよ。
ニノ、一人じゃまともに食わないの心配してるんだよ、大野さんは。
まぁ、貰いもんのメロンパンだけどな」
そのイケメンがホテルの給仕のように丁寧に置いたカップの中には、これまたいい匂いをさせた具だくさんのスープ。
「主食がメロンパンでも、これで多少は栄養摂れるだろ?」
迫力の美形が隣に座ってニコリと笑う。
それはまさかの天使のような笑顔で、この人はきっと神様に愛された人なんだと思う。
「潤くんも呼び出されたの?」
「俺はね、一食浮くなら飛んで来るよ」
「金の亡者なんだから、稼いでるんだから良いもん食べなさいよ」
「俺は純粋な目的があって金貯めてるの。
ニノみたいに邪な理由でこの仕事してんじゃないの」
「目的が純粋だってやってることは不純だわ」
「いいんだよ、こんな稼げる仕事、そうそうないし。趣味と実益だな」
「なぁ、旨いなぁこのメロンパン。
なんか有名なパン屋のらしいぜ。
マツジュンのスープも旨い~」
きっと俺たちの会話はまったく聞いてない。
片手にメロンパン、もう片手にスープカップを持って満面の笑みを浮かべる大野さんに苦笑いを浮かべながら、オレたちもメロンパンを手に取った。
明るい日射しが降り注ぐ、やたらアットホームなここは、
政界、財界、芸能界など各界の大物専門の
boys clab『PARADOX』の事務所だ。
つづく