廊下を歩きながら手帳を捲る。
今日は午前中は各々個人の活動で、午後から集まることになっている。
遠距離での取材だった俺が一番最後かと思いながら楽屋に入ると、先に来ていたのは昨日は大野丸のロケで午前中は休みだった智くんと、ライブの打ち合わせで昨日は家に帰っていない松潤だけだった。
「相葉くんとニノはまだ?」
一心不乱にケイタイとにらめっこしている智くんが、人のスケジュールを把握しているはずはないから、俺は難しい顔をしてパソコンに向かっている松潤に話を振った。
「相葉くんはロケが押してるって。
ニノは、もう来るんじゃない?」
きっとライブの事を考えているんだろう。
一応笑顔で答えてはくれたけど、眉間にはシワが残っている。
コンサートの総合演出という肩書きを持っているこの男は、1年の半分はこうして難しい顔をしている。
何を悩んでいるのだろうと、後ろに回ってパソコンを覗き込むと、
ボタン?
さまざまな大きさの、しかも派手目のボタンが画面いっぱいに並んでいた。
舞台演出だけじゃなく、さまざまなところにこだわる男、松本潤。
それは衣装のステッチの色からボタンまで。
これは首を突っ込んじゃいけないやつだ。
俺はそろそろと自分の席に戻って新聞を広げた。
そうこうするうちに、ロケ終わりの相葉くんが合流して、楽屋は一気に賑やかになる。
洗剤の匂いをさせて入ってきた彼。
「何のロケだったの?」
何気なく聞くと
「保護犬のロケ。
聞いてよ、翔ちゃん。
今日の犬でっかくてさぁ、体洗ってるとそいつがブルブルッてやってさぁ、水とか泡とかすっげぇ勢いで飛ばすんだよ。
もう、全身びっちょびちょ。
俺、このロケの時は替えのパンツ持っていくかんね」
大変だった。
という割にその時の状況を身振り手振りを交えて楽しそうに話す。
10年以上もレギュラーで出演している番組は、相葉くんにとってすっかりホームになっているんだろう。
充実しているのが溢れ出ていて、こっちも思わず笑顔になる。
「ねぇ、ニノは?」
そんな彼が楽屋をキョロキョロと見回して、たりない一人を気にかける。
「まだなんだよ。
ニノがここの現場に一番近いはずなんだけど」
やっぱり前の現場が押しているのか。
俺たちは仕事柄待つことには慣れているし、待ち時間の有効な活用の仕方も身に付いている。
このくらいの事で慌てたりはしない。
のだけど……
その日、
いくら待ってもニノは俺たちの前に現れなかった。
つづく