ベッドマットの心地好い弾力。


ゆっくりと視界を埋めてくる相葉くんの顔は優しい笑みを湛えていて


もう一度重なる唇が気持ちいい。


口づけを交わしながら髪をすかれ、自然と俺の腕は筋肉質な硬い背中に回っていた。


部屋に響くリップ音。


場所は海外のリゾート地、夜景がキレイなホテルの部屋で、聞こえてくるのは波の音。


雰囲気は最高


そこで、好きな相手と二人
盛り上がらない方がおかしい


やがて、相葉くんの唇が顎をつたい俺の首筋に吸い付いた。







っん……





って、ん?






「……ちょっ!ちょっと待ったぁ!!」


酔いなんかあっという間に覚めた。
俺はあらん限りの力を使ってのし掛かる身体を押し退けた。


そのままヘッドボードまでずり上がって膝をついた。つまりベッドの上で正座をした。


ひっくり返された相葉くんが起き上がりながら


「え~なんで~?
せっかくいいところだったのに~」


思いもよらなかった事態に驚きと不満の混ざった声を上げる。


「…俺がいただかれるの?」


大事な事だから真っ直ぐに相葉くんに向き合った。


「へっ?
もしかして、潤がいただきたいの?
いや~それは考えてなかった~」

「なんで?
どっちも男ならどっちがどっちかは、決まってないよね?」

「なんでかって
俺が潤をいただきたいから?
もしかして、潤が俺をいただきたかった?
潤がどうしてもって言うなら………
俺、そっちでもいいよ?」

「……別に、そういうわけじゃないけど……
だからって、俺がいただかれていいってわけでもない!」


相葉くんは俺の対面にあぐらをかいて片手で頭をバリバリ掻いた。


指の間でグシャグシャになった髪の毛は、その髮質のせいなんだろう、彼が手を離した途端にさらさらと元の場所に収まった。


「あ~あ、もうちょっとだったのになぁ…
まっいいや。
いいよ、思ってること言ってみなよ。
俺、聞くから」


相葉くんは残念そうに少しだけ天井を見上げて、その後ふっと俺に笑いかけた。


そして、あぐらの真ん中に両手を置いて俺が話すのを待っていてくれた。


「……俺、相葉くんのこと、本当に好きだよ。
だけど、それとこれとは、っていうか…
いや、好きなら心だけじゃなくって身体も含めっていうのは充分分かってるつもり、いい大人なんだし。
……だけど、俺のなかでイメージ出来てなくて……
どっちがどっち…って言うよりも、正直そこまでの覚悟が………」

「……まだ出来てないと……」

「……ごめん」

「いや、謝ることじゃないから
だけど……
はぁ~っ、俺、またお預けくらうのかぁ~」


何を思っているのか、ガックリと頭を下ろしてあぐらの真ん中に視線を落とした相葉くんが、上目使いで恨みがましく見てくる。


悪いとは思うけど、どうしても考えてしまう。
答えが出なきゃ進めない。
それが俺だし。


そうは思っても、相葉くんの目を見られずにいると


「いいよっ、待つよ。
潤のそんなくそ真面目で頭でっかちなところも好きだから

その代わり」


その代わり?


「潤も俺のこと、名前で呼んでよ」


とんでもない代替え案でなくてほっとしたけれど


「恋人同士なんだし、それくらいいいでしょ?
はいっ、呼んでみて」


「………えっと……ま、さき?」


慣れない呼び名は違和感だらけだけど


「くふふっ、やっぱりいいね」


そんなに嬉しそうな顔をされたら、頑張って慣れようかと思ったのに


「これからはそれでいこうね。
もし間違ったら、その度に罰としてチューだからね」


とんでもない条件がついた。






それからは、ごく健全に楽しいバカンスを堪能して、俺は海への恐怖心を克服出来たのだけれど


うっかり『相葉くん』と呼んでしまって、宣言通りその度に公衆の面前でキスされたのは言うでもない。

















おわり






あとがきは後程……