しばらくの間そのままカズさんに抱き締められていた。


時々グリグリとかずさんの首筋に額を擦り付けて甘える俺を、かずさん黙っては受け入れてくれた。


ずっとこうしていたい。


けれど、すっかり忘れていたことを、思い出してかずさんから身体を離した。


「……あのね、かずさん「まぁくん、渡したい物があるんだけど、貰ってくれる?」


俺の言葉は、ほぼ同時に話初めたかずさんによってかき消された。


そして、言葉と共に俺の前に差し出された物。


小さな箱が炬燵の上、俺とかずさんの間に置かれた。


これは………


かずさんが箱の蓋をパカリと開けると、
その中に虹色に輝くふたつのリング。


「ペアリング……
オレは結婚指輪のつもりなんけど…


…………重いかな?」


指輪を見詰めたまま動かない俺を見上げる瞳の中に不安とかとまどいが見えて


俺は慌てて笑顔を作った。


「……そんなことないよ!
すごく嬉しいよ、かずさん」


一瞬俺の目の奥を探るように見たあとで、フッと笑ったかずさん。


「これね、心配性なまぁくんのために、金属アレルギーが出にくい素材なんだよ」


「……そう、なんだ……」


かずさんの説明を聞きながら、無意識に俺は自分のポケットを触っていたらしい。


「………まぁくん、何かおかしい!
ポケットになにが入ってるの?」

「えっ?な、ナンにも入ってないよ?」

「うそっ、出して!」


目ざとくて察しのいいかずさんを誤魔化すなんて、しょせん無理なはなしで。


俺は観念して、ポケットに入っていた物をおそるおそるかずさんに前に置いた。


ふたつのリングが煌めく小箱の隣に並んだ同じくらいの大きさの箱。


「…………これ……」


目をまん丸にして箱と俺を交互に見たかずさんが


「開けて!」


なぜか命令口調で言う。


俺は言われるまま箱の蓋を開けた。
中には黒いリングがふたつ並んで納まっている。


「……………へへっ…かぶっちゃった」


サプライズをしようとしてかぶるなんて、間抜けすぎて……
だから、出したくなかったのに……


「あ、あのね、こっちはいいから、だからかずさんの方を……」


二人で使おうと言おうとしたのに、かずさんがポロポロと涙を溢しているから言葉が続かなくなった。


「まぁくんも結婚指輪用意してくれたの?

………うれしい……」


かずさんの薄茶の瞳を滲ませて落ち続ける涙。透けるような頬をキラキラと輝かせながら、花のように微笑むかずさんはとてもきれいで……


その幸せそうな笑みに勇気を貰って俺はかずさんの手を取った。


「かずさん、これから先の人生、
俺とずっと一緒にいてください」


俺のプロポーズに涙を流しながら微笑むかずさんは、一層きれいで


「……はい。

……まぁくんもオレとずっとずっと一緒にいてください」


かずさんがくれるプロポーズの言葉に、俺も『はい』と答えたんだ。







「ねぇ、指輪はめてよ」


差し出された男のわりには丸っこい左手の薬指に、黒い指輪をはめる。


次にかずさんが俺の手を取って薬指に黒い指輪をはめてくれた。


それからもう一回、今度は虹色の指輪をはめあって


かずさんが自分の左手を表裏に返しながら、蕩けそうな笑顔を見せる。


そして

「まぁくん、これもアレルギーが出にくい素材でしょ。
やっぱり過保護だ!」


俺を軽く睨むから


「そうだよ!
万が一にもかずさんに金属アレルギーになんてなってほしくないからね。
俺はかずさんに対しては、ずっと心配性で過保護なの!」


そう宣言してやった。


「ずっと?」


「そう。ずっと、ずっとだよ」


薬指にふたつずつはまった指輪が引き寄せ会うように、お互いの手を握り会い
俺たちはそっと口づけを交わした。





十字架ではなく、煌めくもみの木に見守られた


それは、誓いの口づけ






病めるときも、健やかなるときも



ずっとずっと、永久にともに…………













おわり







おわったぁー
あとがきは、のちほど……