和やかなリビングに響き渡るコール。


ケイタイを開くと、そこには一斉送信された文字。


『応援要請
玉突き事故発生
重軽傷者多数搬送中』


病院からの呼び出しだった。


読み終わって顔を上げると、ケイタイをポケットにしまっている大野先生。
その顔はこれまでの仔犬の風情とはうって変わった有能な医師の顔だった。


「相葉ちゃん、飲んだ?」

「いいえ」

「じゃあ、行くぞ」


大野先生はそれだけ言うと、玄関へとさっさと歩いていく。


大野先生はこうなる可能性を考えて、初めから今日は飲まないつもりで車で来ていたんだ。


俺は、


起きたことを取り敢えず説明しようとかずさんを見た。


大野先生の行動、俺の表情、察しのいいかずさんは、それで何かを感じ取っているんだろう。


不安げな表情で俺を見上げている。


「……かすさん、玉突き事故が起きた。
怪我人が大勢大野病院に運ばれて来る。
……スタッフが、たりないんだ」


じっと俺を見詰めるかずさんの瞳。


今日はかずさんの初めてのクリスマスパーティーで


かずさんは今日のために一生懸命準備をしていて


それはそれは今日を楽しみにしていて


ついさっきも一緒に出来て嬉しいって、幸せそうな顔をしていて


俺だって、この幸せな場所でかずさんと


出来ればこのまま最後まで


俺の望みは、かずさんに笑ってもらうことで、そんな顔をさせたい分けじゃあないんだ。






だけど……





「かずさん、俺、行ってくるね」


そう告げると、かずさんに背を向けて大野先生の後を追った。


「まぁくん!」


背中に訴えるようなかずさんの声を聞いたけれど、俺はそれっきり振り返らずに外に出ると玄関のドアを閉めた。










つづく






ちょっと短いけど、きりがいいので……(^o^;)