コンコン!
病室のドアがノックされる。
「どうぞ」
反射的に返事をした。
開いたドアの先にいたのは、黒いスーツに身を包んだ見知らぬ人。
の、後ろから姿を現した
「………東山会長」
言葉が出なかった。
俺ごときの見舞いに来るような立場の人じゃない。
固まる俺には構わずに、ぐるりと病室を見回して
「災難だったな。具合はどうだ?」
笑顔まで浮かべてさらりと言う。
俺を災難に陥れたのはアンタだろ。
大したことなくで残念だったな。
腹の中では思っても、こっちだってそんな事はおくびにも出すつもりはない。
「お陰さまで後遺症も残らず済みそうです。」
お付きの黒服がこれ見よがしに豪華なフルーツの盛り合わせをテーブルに置いて部屋を出ていった。
「それは、良かった。
仕事の方は、このところ随分と頑張っているそうじゃないか」
自分の部屋のように悠々とソファーに座ると、長い足を組んでこちらを見る。
「遅まきながら俺もやっと遣り甲斐と言うものを見つけたもので」
「それは良いことだ。
何か心境の変化でもあったのかな?」
薄く笑みまで浮かべている。
その余裕が憎らしい。
「ええ、まあ、手に入れたいものがありまして」
挑むように真っ直ぐに見返す。
「ほう、それは手に入りそうなのかな?」
俺の視線を真っ向から受けて、跳ね返してくる射るような視線。
「いえ、まだ何とも」
耐えきれず視線をそらしてしまった。
くそう、やはり威圧感が半端ない。
「何にしても、実業界で野心があるということは良いことだ。頑張りなさい」
フフッと声を漏らして笑う。
俺を馬鹿にしているのか。
悔しくて、見えていない所で拳をギュッと握った。
「頑張って、手に入れてもいいんですか?」
勿論、諦めるつもりなんてない。
立ちはだかる壁がどんなに巨大であろうともだ。
「フフッ、出来るものならな」
立ち上がり、初めて見せる冷ややかな表情で俺を一瞥すると、邪魔したなと言って部屋を出て行った。
ドアが閉まるのを見届けて
ふぅーっと息を吐く。
背中が汗でびっしょりだった。
≡つづく≡