相葉くんはきっと単純にキスが好きなんだ。
俺だって相葉くんとのキスは気持ちいいし好きだ。
男同士でどうなんだ、と思わないでもない。
だけど、唇なんて男女でそう変わるものでもないし、だからってムロくんとしたいとは思わないけど………
男同士で恋愛感情なんてあるわけないんだし…
あっ!
ガッシャーン!!
俺としたことが、考え事をしていて皿を落としてしまった。
派手な破裂音に、店内の視線が集まる。
「失礼いたしました」
お客様に頭を下げ慌てて割れた皿を拾う。
何やってんだよ、俺は!
仕事中だぞ!
仕事中に他の事に気を取られるなんて、あり得ない。
全く、最近の俺はどうかしている。
だけど、今日は……
いや、別にいつもと変わらない1日。
毎年何もなく過ぎていた日。
今年だって何をするわけでもないし、期待している訳でもない。
だいたい、あの人は知らないし……
知っていたとしても……
今日はあの人仕事だし……
あの人と今日は関係ないし……
ああっ!もうっ!!
グルグルグルグル何だって言うんだ!
雑念の塊じゃないか俺!
「シェフ」
後ろからムロくんに声を掛けられた。
見るとレジの前に常連の二人組が立っている。
わざわざ今日を選んで来店してくださるお客様がたくさんいる。
プレゼントは丁重にお断りする代わりに、今日は全てのお客様のお会計に立ち会うことにしている。
「フフ、情けないお顔。
そんな顔も素敵だけど。
潤さん、お誕生日おめでとう。
あ、今日はムロくん大事な用事があるらしいから、出来るだけ早く帰してあげてね」
「幸田様?
あ、ありがとうございます。
ムロからは聞いておりますが…
幸田様はご存じで……?」
ムロくんから今日は用事があるので、後片付けは免除で帰らせて欲しいと言われていた。
いつもこっちの無理を聞いてもらっているから、今日くらい全然構わないけど。
幸田様も絡んでいるのか?
話が見えなくて、ムロくんを振り返ると、何故か彼は幸田様を凝視したままで、首を上下にブンブンと振っていた。
「だって品物は受け取ってくださらないんだもの。私たちからのささやかなバースデープレゼントよ」
幸田様?
「き、今日の乙女座は超ラッキーデーです。
ま、待ち人来るです、よ」
金子様……
二人の言っている事はさっぱり分からないけど、満足そうに帰っていく姿に、まあいいかと踵を返した。
つづく