心臓がバクバクと脈打っていた。


夢だって分かっているのに


かずさんの白い肌が頭から離れない。


だからこそ、





ここにはいられない。


一刻も早くここを離れなければ


ドアノブに掛かる手に力を込めた。


「どうして?」


背中から聞こえる、かずさんの声。


「どうして今?まだ夜中だよ」


「うん、そうだね。でも、行かなきゃ」


背を向けたまま答える。


出来れば、俺のこんな醜い感情をかずさんには知られたくない。


けれど上手い言い訳も思い付かずに、答えにならない答えを返す俺に


「だから!どうして!?」


強くなる語気。


その中に滲むかずさんの悲しみ。


「オレがまぁくんに甘えてるから、
オレがめんどくさくて、まぁくんオレのこと嫌になっちゃった?

もう、オレと一緒にいたくない?」


震える声に、堪らずかずさんに向き直る。


みるみる瞳を覆っていく雫に、慌ててベッドサイドに行き、枕元のタオルをその目に押し当てた。


ところがかずさんは、そのタオルを払って俺を見上げる。


怒りも憤りもない、只々悲しみに満ちた瞳。


唯一と決めた相手に去られようとしている。


どうして、怒らないの?


こんなにいきなり態度を変えた俺を


なじってくれていいんだよ。


かずさんはこんな俺も受け入れるっていうの?









だったら、そんなかずさんに対して、俺は正直でいなくちゃいけないね。


「……かずさんが嫌になったりなんてしないよ。大好きだよ。


大好きだから、もう一緒にはいられないんだよ」


「オレ、嫌われてないの?じゃあどうして?」


かずさんの眉間に寄る深いしわ。


「……本当の事を言うね。
俺、かずさんと一緒にいられれば、心が繋がっていればそれでいいって言ったよね。

俺とかずさんが始まった時は本当にそれでいいって思ってたんだ。

だけど……今はもう、それだけじゃダメなんだ。
ううん、気持ちは今だって心が繋がっているのが一番だって思ってる。

だけど……

身体がね、かずさんを求めちゃうの。

抱き締めたい、キスしたいって無意識に思ってるの。

ごめんね。

俺は自分が情けなくて仕方がないよ。

それでも、このまま一緒にいたら、いつかずさんを傷付けるか分からないんだ

だから……

俺は、ここを出ていくよ」


涙を流せないかずさんの前で、自分が泣くのは狡いと思う。


だから、かずさんの前では泣かないようにしてきた。


だけれど、もう無理だった。


頬を伝った涙が、ポタリポタリと床に落ちる。


大好きなのに、


俺の大切な大切なただ一人の人なのに。


最愛のその人に別れを告げている俺。


他に道はないのか、これからもかずさんと一緒にいられる方法は


もうとっくに探し尽くしたそれをもう一度辿っても、行き詰まった道はその先へは続いて行かない。


かずさん、泣いてごめんね。


別れるしかなくて、






ごめんね……











つづく