翌日はすごく良い天気だった。


ここ数日晴天が続いている。
晴れの日が続くと北国でも急に春めいて感じるから不思議だ。


これなら今日のドライブ、俺の運転でも大丈夫なんじゃあないかとかずさんに提案してみたけれど


雪が緩んだ時の方が危ないし、まぁくんの行ったことのない所に行くんだから


と、今日はかずさんの車で出かける事になった。


玄関で色違いのキーホルダーを手に取り、かずさんがクルマを回してくる間に家の鍵を掛けた。


俺は仕事で、かずさんは検診で


なのに、ふたりで出かけると思っただけで心が踊る。


その後のドライブの事なんて考えたら、俺、今日仕事にならないかもしれない。


仕事はきちんとやらないと、と顔をぱんぱんと叩いて振り向くと、玄関先に車を着けたかずさんが運転席からこっちを覗いている。


その笑顔を見た途端、今引き締めた頬が無惨に緩んでいくのを感じていた。





…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*



コンコン!


副院長室のドアをノックする。


………返事がない。


まさか、呼びつけておいて居ないのか?


「大野さん?翔ちゃん?」


もう一度、声を掛けながらノックすると


………どうぞ


やっと返事が帰って来て、やれやれとドアを開ける。


すると、この部屋の主の隣にオレの主治医の姿があった。


二人してネクタイやら白衣やらをやたらと整えているけれど……


そんな二人を無視して空調をオレ仕様に調整した。


「人を呼びつけておいて、いったい何をやってるの」


神聖な仕事場で、真っ昼間から良からぬ事をしていたのがまる分かりの二人に、多少当たりがキツくなるのは許して貰いたい。


「いやぁ~
俺、昨夜当直でさ~帰れなかったもんだからつい」


「それで、二人で盛ってたの?」


大野さん、いやぁ~じゃないでしょ。
オレの冷たい視線にも全く怯まずに、顔を見合わせてヘラヘラしている二人。


突っ込むのが馬鹿らしくなってくる。


「ニノ、検診終わったの?」


「終わったから来たんですよ。だいたい、オレ翔ちゃんに話があるって呼ばれたんですけど、副院長」


「ニノー、副院長はやめてよー」


大野さんが勘弁してくれという顔をする。


地位にも名誉にも興味のないこの人は、役職名で呼ばれる事を極端に嫌がる。


「……ああ、そういえば翔くんがそんな事言ってたような」


本当に覚えていないのか、それとも誤魔化そうとしているのか


「えっ?俺言ったよね、智くんに」


慌てたのは翔ちゃんで、だけど大野さんはそんな翔ちゃんを意に介さず


「まっいいや、ニノがいたら何にも出来ないし、仕事してこよー」


ふらりと立ち上がった。


「これ以上何かするつもりだったの?」


オレが睨むと


「んふふー」


と笑っただけで、翔ちゃんと目と目で何か会話をして出て行ってしまった。


オレはフカフカのソファーに陣取りパソコンを開いたところで、翔ちゃんがオレの正面に座ってきた。


「ニノ、検診の結果なんだけど……」


いきなり仕事モードになった翔ちゃんを見上げる。


「まぁ、あんまり良くはないんだけど、この間のことがあったばかりだし、まだ問題にするような数値でもないから様子を見るとして……
それとは別に、ニノに話があるんだけど」


いつになく神妙な顔の翔ちゃんに、オレは開いたばかりのパソコンを閉じた。










つづく