どれだけそうしていたのか
無機質な扉が開いて、中からかずさんを乗せたストレッチゃーと、櫻井先生が出てきた。
「かずさん!!」
ストレッチゃーに走り寄る。
かずさんは眠っているようで、その白い腕には点滴の管が繋がれていた。
でも、息づかいは来たときよりも落ち着いている。
そのままかずさんに付いて行こうとしたところを櫻井先生に止められた。
「先生、かずさんは?」
本当は一緒にいたい。
今は、一瞬でも離れたくはない。
でも、どうしても先生に聞かなきゃあならないことがある。
俺は振り返って櫻井先生を見た。
「もう大丈夫だよ。経過観察のためにちょっとだけ入院してもらうけど」
櫻井先生が手袋を取りながら俺を安心させるように笑って言った。
「来るの速かったね。迅速な対処のおかげで大事に至らずに済んだよ」
「先生、教えて下さい。
かずさんはどんな病気なんですか?
………かずさんは俺には何も話してくれないんです」
櫻井先生は、まぁ座ってと俺を長椅子に座らせ、自分もその隣に腰かけた。
「ニノはいやがるだろうけどね。
今後のこともあるし、俺から言わせてもらうね」
そして、先生は医師の顔になった。
「ニノはね、水がダメなの。
身体に水が掛かると、当該部位が腫れて痒みや激痛が起こる。
自分の汗や唾液もダメ。もちろん他人のなんて論外。
ひどい場合はショックで死 亡してしまうケースもある」
俺の顔がみるみる青ざめて行くのに気付いた先生が、大丈夫?と背中を擦ってくれた。
そのうえで
「続けてもいいかな?」
と聞いてくる。
俺は言葉が浮かばなくて、ただコクリと頷いた。
先生はフッと息を一つ吐いて続けた。
「世界的にも症例が少なくてね。
治療法が確立されてない。
今のところ、その都度症状によって対処するしか方法がないんだ。
病気ではあるけどね、ニノの場合は免疫が関係していると俺は思ってる」
「今はショックに対する点滴をしてるけど、ニノが気が付けば点滴も外れるし、経過を見て問題がなければ直ぐに帰れるから」
そう言って俺を気遣って笑いかけてくれた。
だけど俺は……
聞き慣れない病名と、かずさんの背負った余りに過酷な運命に目の前が真っ暗になっていた。
つづく