お題 : 「萌えエピソード」


題名:「Naked」








カツン……カツン……


エレベーターを降りて静まり返った通路を重い足取りで歩く。


昨日の朝ここを出てから何時間ぶりだ?


リハーサル室のパイプ椅子に12時間座ってたって?
時間なんか覚えてる訳ないだろ。


まあ、ライブを考えている時は毎回こんなもんだ、別に珍しいことじゃない。


にしても、さすがに疲れた……


家に帰ったらこのままベッドに直行したい。


そういえば、最後に食事したのいつだっけ?


あーーー!もう、思い出すのもおっくうだ!


別に2・3日食べなくたって、人は死にやしないだろ。


鍵を鍵穴に差し込む。

扉を開けて「ただいまー」

誰もいないと分かっている部屋に帰宅を告げる。








と、





「おかえりー」


中から声が返って来た。


えっ?

誰もいないはずなのに…


よく見ると、廊下に漏れる明かり、玄関に揃えられた靴。





あいつ、来てるのか?


途端に目が覚めた。


流れてくる旨そうな匂いに、腹の虫が鳴き出す。
今の今までこのまま眠りたいと思っていたのに、身体ってやつは随分と都合良く出来てる。


急いでリビングに入ると、
忙しさのあまりソファーに投げっぱなしになっていた洗濯物が綺麗に畳んであった。


掃除機も掛かってる?


いいにおいの流れてくるキッチンに行くと、薄茶の瞳がチラッと俺を見て、まな板に戻された。


「ニノ、来てたの?
なにしてんの?」


「なにしてんのはずいぶんじゃない?
見て分かんないかなぁ、夕飯作ってんの」


おれの問いに答えながら、ニノはさすがの手捌きでネギを刻んでいる。
普段ほとんど料理なんかしないのに、いざやれば人並み以上に出来てしまう。
何やってもそう。
ホント器用。


「掃除までしてもらって、お前だって忙しいのに」


「まぁね、わたしだって嵐ですから、毎日忙しいですよ。
でもね、寝てない、食べてない潤君の夕飯作る時間位はあるの。

いったい何時間起きてる気?」


咎めるような目に思わず素直に時間を答えていた。


「んー……えーーと、38時間?」


「もうっ、ライブのこととなると加減を知らないんだから。
とっととメシ食って、風呂入って寝なさいよ」


俺の背中を押してダイニングテーブルに座らせようとする。


「えー、せっかくニノがいるのにー
今日は泊まって行くんだろ?」


身体を捩って手を伸ばすと


俺の腕の中にスッポリと収まり潤んだ瞳で見上げてくる、愛しい人。


「……そのつもりだけど?
ふふふ、起きていられたらお相手してあげますよ」


よーし、言ったな


「今夜は寝かせないぜ」


わざとキャラを作って言ってみたら


「そしたら潤君も寝られないんじゃん。
新記録作る気なの?」


くすくすわらってる。
お前、絶対無理だと思ってるんだろう?


言うまでもなくお互い忙しいから、二人で過ごせる夜なんてホントに限られてて、


いい加減、俺はお前に飢えてんだよ。


こんなチャンス逃すはずない。
合意したからな。
土壇場で逃げんなよ。







一緒に鍋をつつきながら、今日打ち合わせて来た資料を広げる。


「ここなんだけどさー、しっくり行かないんだよな。
ニノはどう思う?」


資料をニノに向けると


「メシ食ってる時くらい仕事のことは忘れたら?だいたい、あなたの頭の中がオレに分かるわけないでしょ」


なんて口では言うくせに、身を乗り出して覗き込んでくる。
資料に見入る目は真剣で


「ここの流れを考えると、こっちをこうするのも手かもね」


ほら、的確な答えが返ってくる。


「そうか、その手があったか!」


やっぱりお前には俺と同じ景色が見えてるんじゃん。
そして俺が細部に拘りすぎて見えなくなってた所を俯瞰で見てるお前の指摘。


お前に相談して良かった、ってこっちは感心しきりなのに


「あなたは松本潤なんだから、自信持ってやればいいんだよ」


なんて、そんなに真っ直ぐな目で見られたら、嬉しくって、こそばゆくって


なにより、愛しくて……


もう、メシなんて食ってる場合じゃないじゃん!


「ニノーーー!」



我慢できずに覆い被さろうとする俺の胸を押し返して


「もう!昨日シャワーも浴びてないだろ。
メシ終わったなら、風呂入って来る!!」


ピシャリと言われれば、言うとおりにせざるを得ない。
何でだろう、ニノの言うことには逆らえない……


俺はしぶしぶ風呂場へ足を向けた。


丁度いい湯加減で肩まで浸かれば身体中の力が抜けていく。
ニノのやつ、俺の好みの湯加減まで把握してやがる。そんなことも嬉しくて、この後の事に余計に期待が高まってついにやけてしまう。






さっぱりして出てくると、タイミングを計ったように目の前に差し出されたのは、


グラスの中で気泡が弾けるシャンパン。


風呂上がりには最高よ。なんて手に持たせてくるけど、今、酒はダメでしょ。


寝てない身体、腹も膨れて、風呂でさっぱりして、髪を乾かして貰いながらのアルコールなんて天国じゃん。


気持ち良すぎて起きていられる自信なんかない。


そしたら、ニノとの熱い夜が…………




………………とは思うけど


目の前でグラスに水滴を纏い揺らめく黄金色の液体が俺を誘う。


抗い難い誘惑に、ひとくちだけと口に含んだ。


……うまい!


これもまた超俺好みの味じゃあないか。


そうなったら、ひとくちで済む分けもなく、あっという間に飲み干してしまった。


そんな俺を見てニノが嬉しそうに


「口に合ったみたいで良かった。
はい、もう一杯♡」


なんて語尾にハートマークまで着けてニコニコと注いでくるから、ついついまたグラスを空けてしまい、
そうなったら酔いが回るのなんてあっという間で……


身体が言うことを聞かなくなってきた。


瞼が重くなって、熱い夜を過ごすはずの愛しい人の姿がボヤけてくる。


手から落ちそうになったグラスをニノが取り上げたのが分かった。


くっそー

ニノのやつ、謀ったな

薄れゆく意識の中で、ニノがニヤリと笑ったのが見えた……











完全に寝入ってしまう前に、オレより大きな
身体を何とかベッドに転がした。


ほら、疲れきってるくせに。


妥協が出来なくて、とことんまで突き詰める。
不器用で真面目で、誰より熱いあなたをオレがどれだけ心配してるか分かってんの?


休むのも仕事の内でしょ。


と、クルリと跳ねた黒髪に指を通した。


そのまま指を頬へと滑らす。


ひと山越えても、また次の山が待ってる。これからも忙しいオレたちだから、いつになったら二人の熱い夜が迎えられるのか分からないけど、


オレだって待ってるんだよ、潤君





「ふふっ、口半開きじゃん」


あどけない顔で眠っている。
外での松本潤はあどけないなんて形容が最も似合わない部類に属するけど。
子供のようなその寝顔は間違いなくあどけない。
安心しきったその顔は、きっとオレだけに見せてくれるもの。



オレは "あどけない寝顔" のその唇に小さなキスをした。








-おわり-






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【冬嵐】
「Naked」読んで頂き有り難うございました。

萌えエピソードは

ニノちゃんのメッセージ
「あなたは松本潤なのでもっと自信を持っていいと思います」

と、

松潤が言った
「ニノは俯瞰的な目があるから、コンサート中にどうする?と目が合う」

というところからの妄想でした。


最後になりましたが、
涼ちゃんさん、りみたん*さん冬嵐の企画有り難うございました。


何よりこれから皆さんの所に行かせて貰うのが楽しみです。ゆっくりと回らせて頂きますね。




あとがきは後程(*^^*)




〇嵐、最後なんですね。
そう思うと寂しいけど、
涼ちゃんさんりみたん*さん大変お世話になりました。本当に有り難うございました。