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見合い当日、お供を連れて現れたのは
上品な薄いピンクのワンピース。緩くウェーブのかかったセミロングの髪、華奢な肩。



多部コーポレーションの令嬢は俺の前で涼やかな笑顔を見せた。







ところが、しとやかな良家の子女は俺と二人きりになると纏う空気を一変させた。


彼女は射るように俺の目を見ながら


「私たち結婚しましょう?」


と、赤い唇の端を上げた。


「いや、…俺は」


こんなにも恋い焦がれる人がいるというのに、結婚など出来るはずがない。



ところが彼女は


「あなたに想い人がいるのは知っているわ。
でも、この結婚が避けて通れない事も分かっているでしょう?
だったらこちらもこの結婚を利用してやるのよ」


まるで商談でもするように淡々と言い放った。


「一体何を言ってるんだ」


「私は家のための駒になるのなんて絶対イヤなの。
櫻井製薬との関係を足掛かりに、凡庸な兄の代わりに多部コーポレーションを手に入れたいのよ。
心配はいらないわ。書類の上だけの結婚よ。
お互いに利用価値が無くなったら離婚すればいいでしょ?」


突然の事に戸惑っている俺に甘い誘惑が囁かれる。


「この話に乗ってくれたら、彼に逢わせてあげる。

東山のおじさまの大事な人が好きなんでしょ?」


「そ、そんな事、出来る分けないだろう…」


常識で考えたらあり得ない。
冷静になれと自分に言い聞かせる。
けれど



「うふふっ。
わたし、東山のおじさまにはとても可愛がって頂いているの。

わたしならきっとあなたの望みを叶えてあげられるわ。

どう?」


上手くいけばもしかしたら……
だけど失敗したら待っているのは破滅。


君に逢わせてくれるという彼女は幸運の女神か、それとも危険な賭けを持ちかける悪魔か。







答えを保留にしての帰り道、道路脇のコンビニに似つかわしくない高級車が止まっていた。


信号待ちの停車中ぼんやりとそれを眺めていると、車から降りてきたのは決して忘れることの出来ない後ろ姿。


「先に帰ってくれ」


運転手にそう言い残し、動き出そうとしている車から飛び降りた。


どんな偶然だ。
いっそのこと運命だと思ってしまおうか。


はやる気持ちを抑えてダストボックスの前で躊躇するその人に近づく。


その手の中には赤いリボンのかかった小さな箱。


ああ、今日はバレンタインか。


「それ……俺にくれませんか?」


君からのチョコレートなら奪ってでも手にいれたい。


ためらいがちに俺の手に置かれた箱ごとその手を握った。


離したくない。


俺を見詰めて揺れる黒い瞳。
君だって同じ気持ちだろう?


けれど、供の者に促されて肩を落として去っていく姿をなにも出来ずに見送るしかない今。


君の背中ばかりを目で追う、今を変えたい。




俺は悪魔との契約を交わすために、携帯を手に取った。









≡おわり≡






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抱擁のバレンタイン編お読み頂きありがとうございます。


さて



募集させて頂いた、首領(ドン)は投票の結果、



東山さんになりました~  ドンドンパフパフ~
( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆



皆様色々考えて下さりありがとうございました。

最多投票は東山さんでしたが、他にも沢山のお名前をいただきました。

15日のここママさんの記事でご紹介させていただきます 。


その時はそちらにリンク貼った記事をあげますね。ぜひ、見に行ってみてくださいね~






では、またヽ(*´∀`)ノ