「…あの、家が修理できるまで下宿させて頂いていいでしょうか?
動けるようになったら、家事はもちろん家賃も払わせてもらいます」
他に行くところのない俺は、この申し出を有り難く受けさせて貰うことにした。
「ふふ、決まりね。じゃあ病人はゆっくり休んで。
潤、せっかく来たんだから夕飯と明日の朝食も作って行ってよ」
「はいはい、最初からそう言えばいいのに。
夕飯は俺もここで食って行くからね。
相葉さん元気になったら覚悟しなよ。
かずは人使い荒いんだから」
「ふふふ、悪いか。
あんたは夕飯が出来るまで寝てなよ」
潤君の元気な声に静かに答えるかずさんの声。
二人が話ながら部屋を出ていった。
ドアがぱたりと閉まってこの部屋の音が消える。
何だかいろんな事が一度に起こって整理が出来ない。
やっぱりどこか現実感のないまま、俺は襲って来た睡魔に身を委ねた。
……相葉…責任を………
…ごめんなさい、私……………………
………………お父さんとお母さんが……
………あいばくん……相葉くん……
「……相葉くん!」
「………んっ……う、うわぁ!!」
頭の上で呼ばれる名前に唐突に現実に引き戻された。
……はぁ、いやな夢を見た……
いや、夢でもないか……
「どうした?随分うなされてたけど」
俺の様子を気にかけて声をかけてくれたのは、かずさん?
いきなり飛び起きた俺に目を真ん丸にしている。
「ああ、ごめんなさい……ちょっと、夢見が悪くて」
気が付けば全身に汗をびっしょりとかいていた。
かずさんがふわふわのタオルで俺の額の汗を拭いてくれて
「着替え自分で出来る?潤の服、少し持ってきてもらったから」
と、新しい下着と潤君のだというグレーのスウェットを出してくれた。
寝覚めが悪かったとはいえ、その前にぐっすり眠れたせいか、俺は身体を起こすことが出来るようになっていた。
「ありがとうございます。自分で着替えられます」
俺が答えると、かずさんが安心したように笑う。
「じゃあ、脱いだ服これに入れて。
洗濯するから、潤が」
ベッドの下にランドリーバッグを置かれた。
独り暮らしなのに本当に家事しないんだ、この人。
「ここに来たとき着てた服は洗濯してクローゼットに入ってるから。」
壁と同じ色の白いクローゼットを指差す。
「何から何まですいません」
俺が頭を下げると
「そんなに畏まらないで。これから一緒に生活するんだから。
あー、どうしてもっていうなら潤にお礼言ってやって。その服も洗ったの潤だから。
オレはこういうの役に立たなくてね、ふふっ」
潤君はどこまで働き者なんだ。
それにしても、何もかも潤君にやらせて笑っている目の前の人が、笑っているのに寂しそうで辛そうに見えるのは何故なんだろう。
つづく