side   N



だんだんと離れていく教室の様子が気にはなったけど、引かれた手に追い付こうと歩幅を広げたら、途端に腰に激痛が走った。


「速すぎた?ゴメン」


と、すぐさまオレの腰を支えようとする腕を断って、溢れそうな涙を腰痛のせいにして拭った。


「大丈夫。朝よりだいぶいいから、ゆっくりならひとりで歩けるから」


またゴメンと謝って、繋いだ手だけは離さずにそろりそろりと歩き出すオマエの横顔を見上げた。


まさかまともに歩けなくなるなんて流石に思わなかったから、多少情けなくはあるけど、
まぁ、最初なんてこんなもんだろう。


オマエは何回も謝ってくるけど、オマエが悪いことなんてひとつもないんだ。


オレだってシたかった、期待してたんだから。


確かに受け入れる側の負担は半端じゃなかったし、今朝熱が出たのも予想外だったけど。


朝のオマエを見たら、どうしても一緒にいなきゃと思った。


どうなるかは分からない。


何もないかもしれない。


だけど、もし、オマエがひとりで非難や蔑みの目で見られたとしたら……


そんなの耐えられない。


負の感情はオレが浴びる。
オレがオマエの盾になる。


そんな決意をもって学校に行ったんだけど……


オマエは、そんなオレの決意ごと全部抱え込んで笑ってた。


オマエの真っ直ぐに伸びた背中に1本の太い芯が見えた気がした。


いつの間にこんなにデカい人間になったんだろう。
しっかりと握られたオマエの手に、全てを委ねてしまいたくなるほどに。




12月のなのに日差しの暖かい中庭をゆっくりと歩きながら、ぼんやりとそんな事を考えていると


なぜかくふくふと嬉しそうに笑っているオマエ。


「……どうした?」


「んー?………くふふ
かずは俺のもんって、みんなに宣言しちゃったなぁって思って。
これで、誰もかずにちょっかい出そうなんて考えないよね?」


あの発言、そんな意図もあったんだ………へぇ……


くふくふがニヤニヤに変わって、しまいにはキラキラした目でオレを見てくるコイツ。


「……ねぇ、かず?
俺、もうすぐ誕生日なんだよね。
その頃には、かずの身体も良くなってるよね?!
………そしたら…またデキルかなぁ?

誕生日プレゼントでかずをちょうだいね!」


おもちゃをねだる子供のような顔。


「オマエ、そんな事ばっかり考えてるのかよ!」


さっきまでのオレの感動をどうしてくれる。
オレは今の今まで心の中でだけど、オマエを誉めちぎってたんだよ。


なのに


「そりゃあそうだよ、だってヤりたいさかりのハイティーンだよ!
あ、今度の誕生日で二十歳、成人だよ。
ねぇ、成人てなんかエッチな響きだよねぇ。
えっと、なに言ってたんだっけ……

ああ、だからね、俺の頭の中はかずのあんな姿やこんな姿でいっぱいなの!
もっともっと勉強してさ、次の時にはかずのこといっぱい気持ち良くしてやるからね。
あー楽しみ。くふふ………」


………やっぱりコイツはただのバカだった。
何で成人がエッチなんだよ。
オマエの頭の中がエロでいっぱいなんじゃねぇか。


珍しくシリアスにコイツのことを考えようとしたオレが間違ってた。


「……バッカじゃねぇの!」


……とは言ったものの、本気で怒る気にもなれない。


そんなオレを見て、またくふくふと笑うオマエ。


こんなバカをこんなにも好きなオレも相当なバカだ。



なんて思いながら繋がれた手をキュッと握った。











つづく








次回、最終話です。たぶん………