聡いニノのことだ、こうなることは分かってただろ?
真っ直ぐで、人の心の裏なんか読もうとしない、それでいて自分の気持ちを隠そうとしないまぁ。
だから、きっとまぁ一人で来てもこうなった。
まして、今日のニノがまぁの隣にいたら、なおのこと周囲に触れて回ってるようなもんだ。
みんな見ない振りはしてるけど、注がれる視線。
羞恥以外のなにものでもねぇじゃん。
まして、その中に混ざる冷たい視線。
以前のお前なら確実に避けて通っていた場所に、敢えて来たんだよな。
「何で来たの?」
俺の問いの意味、分かるってるよな。
問われたお前はダルそうな顔を上げていやに真っ直ぐ俺を見て、口の端を上げた。
「だからだよ。
こいつ一人を寄越したら、何言い出すか分かんないからな。
オレが一緒にいて止めないとな」
まぁに気付かれないように言葉を選ぶ。
だけど、俺には分かる。
この場所にまぁを一人にしないために。
この、暖かいだけじゃない視線を一緒に浴びるために、辛い身体に鞭打って敢えて来たんだ。
まぁを、守るために……
「俺、そんなにベラベラしゃべらないよぅ」
何にも知らずに能天気に笑うまぁに
「まぁ、愛されてるじゃん」
なんとも言えない気持ちになった。
「うへへー
松潤もそう思う~?
でも、俺の好きの方が大きいけどね~」
デレデレとニノを見下ろすまぁの顔を、見たこともない優しい微笑みで見上げるニノ。
ニノの覚悟を教えてやりたいけど、それをニノは望んでないから、結局俺は黙るしかなかったんだ。
1限の授業が終わって、今日は帰ると席を立つ二人。
教室内の空気も何となく二人を追って張り詰めている。
その中を来たときと同じようにゆっくりと歩いていく。
出入口の引き戸を開けたところで、まぁがクルッと振り返って教室内を見回しスッと息を吸った。そして
「みんな、気を使わせてゴメン。
俺、かずが大事だから、かずのこと守りたいから。
だから、もし、
言いたいことあったら、俺に言って」
はっきりとそう言い切って、ニカッと笑った。
呆気にとられて二人を見るクラスの奴ら。
その中で今度は
「かず、一緒にいてくれてありがとう」
とニノを包み込むように微笑んだ。
「………いいぞー、あいばー」
教室内の誰かが掛けたそれを合図のように、部屋のあちこちから、拍手が沸き起こった。
それを受けて、まぁが深々と頭を下げる。
なんだよ
こいつ全部分かってんじゃん。
周りの空気も、ニノの覚悟も。
全部分かってて、真っ直ぐなまぁらしく全部受け止めるつもりでいるんだ。
これはこれでこっ恥ずかしい拍手の中、突然のことにポカンと口を開けたまま、まぁを見上げ固まっているニノの手を取り二人で出ていく。
引かれた手に引きずられるように付いていく、ニノの鼻の頭が赤くなっていた。
覚悟を決めてここに来たニノにも伝わっただろう、みんなに宣言したまぁの覚悟。
俺はただ、二人が出て行った開けっ放しの引き戸の向こうを見ていた。
人を好きになるって、こんなにも相手のことを思いやれるもんだっけ。
二人ともが自分を盾にして相手を守ろうとしていたなんてな。
ほのぼのと温ったかく変わったここの空気を感じながら、窓から入る日差しに目を細めた。
きっと今頃二人はこの日差しの下をゆっくりと歩いているんだろう。
手をたずさえて。
つづく