side J
誰か、この空気をなんとかしてくれ。
昨日は、翔さんと大野さんをアメリカに送り出し、その流れで友達とカラオケ行って楽しんで
今朝は寒かったけど、空気がキンッと冴えてて天気も良くって、すこぶる爽やかな気分で登校したんだよ。
クラスの奴らともご機嫌で挨拶交わしてさ、清々しい一日になるハズだったんだよ。
なのに
こいつらが入ってきた途端、時間が止まったよな。
二人を見たみんなが一瞬固まって、それから不自然に視線をそらす。
その後の奴らの会話のぎこちなさ。
まぁの、おはよーって声に教室の入り口の引き戸を見ると、いかにも具合悪そうにギクシャクと歩くニノ。
そのニノを支え るように片手はニノの手を取り、もう片手はニノの腰を支えるまぁの姿。
ニノの服はあきらかにサイズの合ってない白のセーター。
どう見たってそれまぁのだろ。
そのニノの色気が半端ない。
赤みを帯びた頬に潤んだ瞳。
だけどそれだけじゃない、どうにも色っぽい艶めいた空気を纏っている。
そんなニノを支えるまぁが肩に背負ったデカめのバッグからはみ出て見える物。
それ、クッションだよな。
この教室にいる奴ら全員が、それの使い道と昨日お前らに何があったか気付いてるから。
二人のことを見守るスタンスの周囲も、このあからさまに昨日ヤりましたって空気は、さすがに生々し過ぎて目のやり場に困る。
ほとんどの奴はただ恥ずかしいってだけだけど、その中には好奇心や嫌悪の感情が混じってるのも、確かにあって……
どうしたもんかと思うけど、万人に受け入れられるもんでないことも分かってる。
思った通り、俺の前まで来たまぁが、木製の固いイスの上にクッションを置くと、そこにニノをそっと座らせた。
「かず、ちょっと熱があってさ、今日は休んだらって言ったんだけど、どうしても来るって言うから」
いつの間にか、かずになってるし。
俺は何も聞いてないぞ、迂闊に口を出したら危険なことになるのは百も承知だからな。
だけど、ニノを心配そうに見ながら、その実嬉しくってしょうがないって顔のまぁはきっと誰にも止められないんだろう。
「別に病気じゃねぇし、だいたい今日のオマエを一人で学校になんか遣れるもんか」
いつもの口調なのに、そのいつもより赤い唇、駄々漏れる壮絶なまでの色気、なんか俺までドキドキしてくる。
「具合悪いなら休んでも良かったんじゃね?」
って、俺はニノに言ったんだよ、それなのに
「そうでしよ!
昨日かずにムリさせちゃったからさー。
俺、今日どうしても出なきゃならない授業だけ受けたら帰るから、ウチで待っててって言ったのにどうしても一緒に行くって聞かないんだもん」
これ以上ないってくらい、にやけたまぁの顔。
あー、初めてのニノにムリさせちゃったのね。
それで、身体の負担が大きすぎて熱が出たと。
そんで、今日は二人でまぁのウチから来て、ニノは昨日家に帰ってないから、まぁのセーターを着てるってことね。
……うん、大変だったね。
で、まぁはニノの身体は心配だけど、嬉しくってしょうがないと、
そういうことなんだぁー
相変わらず分かりやすいまぁ。
考えてることが手にとるように分かる。
だけど
反対に自分の内側をなかなか見せないニノ。
無理をおして来た、理由があるんだろ?
つづく