青應祭の後片付けも滞りなく終えて、俺たちは以前の生活に戻っていた。


松潤はテニスの腕をめきめき上げて、元々のカリスマ性もあって、次期部長の最有力候補だって。


ファンは増える一方だけど、前のように引き連れては歩かなくなった。
まあ、前も引き連れてた訳じゃなくて、勝手に付いてきたんだけど。


松潤が出した、部活の時以外は追跡禁止令をみんなが守ってる。


その代わり部活中のテニスコートの回りは凄いことになってる。


黒山の人だかり、いや、今時の女の子はみんなおしゃれだから、カラフルな人だかりに黄色い歓声が飛び交ってる。


もう、アイドル並の人気。
テニス部はまた入部希望者が増えたみたい。
男女共に。




俺は、ファミレスのバイトを少し多めに入れるようになった。


学祭の準備期間中にけっこう休ませて貰って迷惑かけちゃったから、その分の穴埋めにいそしむ日々。


小市マートの荷降ろしも続けてるから相変わらず忙しい毎日。




ニノは……
ニノはあれから驚くほど変わらない。


松潤と俺と三人で授業を受けて、たまに卓研(ゲーム部)に行って、またたまに俺のバイト先のファミレスに顔を出す。


バイト終わりの俺と一緒に俺の部屋に来てゲームしてったりすることもある。


翔ちゃんとおーちゃんのことは何も言わない。


落ち込んだり、病気になったりしたらどうしようかと心配してたから、毎日元気に学校に来てくれて良かったと思ってる。


ついでに心の底では、あの時ニノが俺の胸で泣いてくれたことが嬉しかったりしてる。


あの時はそれどころじゃなかったし、あの慟哭を前に不謹慎だとは思うけど、時間がたって冷静になるとニノの涙を受け止めるのが他の誰かじゃなくて俺で良かったって。


勝手だけどね。


ニノのいないときにその事を松潤に話したら、松潤は何か考えてるようだったけど、その時は"そうか"としか言わなかった。




ああ、そうだ。


変わったことがひとつある。


天使がね、


いるんだよね。


初めて会ったときの光に溶けそうなニノが、最近ちょくちょく顔を出す。


それは、授業の合間に三人で話してる時だったり、一緒にお昼を食べてる時だったり、まちまちなんだけど……


もちろんそこに翔ちゃんはいないし、なんなら誰も見てない時もある。


何でか良く分かんないけど、俺はそのたんびにドキドキしてる。


もちろん、俺にとって天使のニノはきっかけでしかなくて。


今は胡座をかいてゲームしてるニノも、嬉々として俺をいじってるニノも大好きなんだけど…


やっはりあの瞬間のインパクトは強くて、その顔を見る度になんだかソワソワしちゃうんだよね。


俺と一緒にそのニノを見てる松潤は、透き通るようなニノとそれを見てソワソワしてる俺を見比べて、ちょっとだけ眉を寄せるんだ。








つづく