side   S



ニノと雅紀が出ていったドアの反対側、校庭に面した窓は開いていて、そこから外の打ち上げの騒ぎが聞こえてくる。


あーあ、雅紀に睨まれちゃったよ。


「智くん、わざとでしょ。
ニノが来るの分かってて、わざと見せつけるようなキスしたでしょ」


おかげで雅紀を怒らせた、と恨み言を言ってみると


「翔くんだって分かってて乗った癖に」


全部お見通しという顔で俺を見下ろす。


「ニノ、大丈夫かな?」


「大丈夫じゃね?しっかり相葉ちゃん連れてったじゃん」






やがてどんちゃん騒ぎに紛れて聞こえてくる小さな泣き声。


「ニノだ……」


智くんが声のした窓を振り返る。


「ニノの泣き声なんて初めて聞いた。
雅紀が一緒にいるんだね」


あまりに悲痛な泣き声に胸が痛む。



だけど、今まで誰にも見せられなかった泣き顔を雅紀には見せられるんだと思うと、変に安心する自分もいた。


「ニノの、翔くんからの卒業式だ。

寂しい?翔くん」


「ふふっ、ちょっとだけね。
ニノの気持ちが、恋心からいつからか執着に近いものに変わっていってると分かっていても、慕ってくれるのは嬉しかったし…
やっぱり、カワイイ後輩だからね」


「んふふ、ちょっと妬ける」


「何言ってるの」


あなたとニノで俺の中の立ち位置が全く違うことくらい分かりきってるでしょうに。


時々こういう風にどストレートな感情表現をするから、その度にドキドキして、俺は自分の気持ちを思い知るんだ。


「だけど、ニノを泣かして、雅紀に恨まれて…

損な役回りだよねぇ」


「んふふ、先輩だからな。
先を歩く者の務めかな」


「身動き出来ないニノを見てるのは俺も辛かったから、これで前に進めるかな?」


「たぶんな、もしそうでなくても俺らが出来るのはここまで。
後はニノが自分で決めること」


ふにゃふにゃしてる癖に真っ直ぐな強い瞳。


いつ、どんな時でもぶれないあなたが俺の指針。


俺はどうしても揺れちゃうから。





「それはそうと……
智くん、さっきのあれは、プロポーズ?」


「それ以外の何に聞こえた?」


ふふんっと、またどや顔だけど…


「えぇーー
大事なプロポーズ、ニノを前に進めるために使っちゃったの?

もう一回ちゃんと言ってよ」


こんなわがままを言えるのもあなたにだけ。


「ああいうのは、そんな何回も言うもんじゃないし。
………それに」


智くんが部屋のドアを閉めて


「俺たちに言葉はいらない」


さっきとは比べ物にならない熱いキスが降ってくるから


「……ケチだね」


頭の後ろに手を回して自分に引き寄せ、さらに深い口づけへと誘った。








つづく