松潤と翔ちゃんが俺たちのことを気にかけてくれてることに全く気が付かないまま俺は、ただニノに会いたくてステージ裏の楽屋に向かってひたすら走った。


ドアを開けるとそこは出番前後の人たちでごった返していた。


行き交う人のすき間をぬって進みながらニノの姿を探して目を凝らす。


と、楽屋の隅でパイプ椅子に座ってボンヤリしているニノを見つけた。


「ニノッ!」


必死にニノに向かいながらかけた声に気付いたのか、ニノの顔がゆっくりとこっちを見た。


その顔に見覚えがあった。


初めて会ったときの、給水塔の上のニノ。


そこに俺の天使がいた。


一種のトランス状態なのか、普段俺には見せない綺麗な笑顔で


「ああ、相葉さん」


なんて笑いかけるから、俺は勢いにまかせて汗にまみれた白い身体を抱き締めた。


「にの、スゲェー良かったよ」


耳元で囁いたのはいいけど、力加減を間違えたのか、腕の中のニノが「ギブギブ」と俺の腕をタップしてる。


ハッとして力を弛めると、俺の身体を押し返して


「いきなり絞め技決めんじゃねぇよ。気ぃ失うは!
こっちは全部出しきってクッタクタなんだよ。ちっとは労れ!」


あーいつものニノに戻っちゃった。
もう少しトランスしててくれても良かったのに。


だけど俺はめげずに


「ニノ、スゲェ良かった。カッコ良かったよ」


もう一度抱き締めにいくと、俺の腕を巧みにかわしながら「そうだろ」と得意気な顔。


俺はもう周りが見えなくなっていて、二人だけでいるつもりだったんだけど、実際にはここは楽屋で大勢の人がいて


「おぅ、相葉ちゃん。俺とニノのダンス観てくれた?」


汗を拭きながら近付いて来たおーちゃんの声にビクッと肩が跳ねた。


忘れてた……


「……おーちゃんのダンス、凄かったよー
俺、浮いてるのかと思ったもん」


焦って答えたけど、そう思ったのは嘘じゃない。


「相葉ちゃんもおーちゃんって呼んでくれるの?
嬉しいなぁ」


俺の動揺には気付かずにニコニコしてるおーちゃん。


さっきみんなにそう呼ばれているのを聞いてから、俺の中ではすっかりおーちゃんになってたから無意識に出てた。


でも、先輩だよね。
いきなり失礼だったかな?


「あ、ごめんなさい。
馴れ馴れしかった?」


肩をすくめると


「んふふ、俺そっちの方がいい。
ニノと松潤はいつまでも堅苦しいんだよな」


「オレは今さら変える気はありませんから、大野さん!」


「これだよ。
ニノは話し方だけはこんななのに、そこに敬意なんて欠片もないんだから」


ちょっとふて腐れたように言うおーちゃんが、かわいい。


「そうなんだよ!
わかるよ、おーちゃん。
ニノってそういうとこあるよねー」


おーちゃんの肩に腕を回すと、おーちゃんからも腕が伸びてきて自然と形を組んだ。


「ねー」
「なー」


二人でニノを見下ろすと、「二人してなんだよ」と不満そうに口を尖らせる。


楽しくなって、おーちゃんと顔を見合わせて笑っていると


「俺も変える気ないよ、大野さん」


後ろから松潤の声。


いつの間にか松潤と翔ちゃんも来ていた。


「お疲れさま、智くん」


「うん」


たいして言葉は交わさないのに、漂う甘い空気。


きっとこの二人は言葉以外のところでも会話が出来るんだ。


だけど、出来ればニノには見せないで欲しい。
翔ちゃんのことが好きなニノの気持ちを思うと…
やっぱり俺にはニノが一番だから。



「雅紀、ここからはフリーでいいから。
ニノと一緒に回ってきたら?
もうあんまり時間はないけど」


先輩の顔に戻った翔ちゃんが言ってくれて


「ホント?やったぁ!
ニノ、行こう!」


うれしくってテンションが上がってしまった俺に


「しょうがねぇなぁ。
じゃあ付き合ってやるから、シャワーぐらい浴びさせろよな」


と、めんどくさそうに立ち上がってくれた。










つづく