青應祭は大盛況のうちにあっという間に最終日を迎えていた。


来場者数は去年を大幅に上回り、内容も充実していて教授やOBからも絶賛された。


この分だと大成功で終われそう。
大変だったけど、関われてよかったなぁ。


俺も他のみんなと一緒で達成感でいっぱいだった。


これから大野さんとニノのダンスパフォーマンスがある。


俺と翔ちゃんと松潤は全部が見渡せる講堂の一番後ろのど真ん中に陣取ってその時を待っていた。


今までステージにいたのは売り出し中の新人アイドルで、短いスカートをヒラヒラさせて踊る三人組。
俺も何度か深夜番組で観たことがある。


ステージの最中、追っかけらしきファンがレスポンスしていたし、今もその余韻で場内はざわついていた。


松潤の采配がいいんだろう、本人がいなくてもステージ上はセットの転換がスムーズに進んで行く、っていうかステージからなんにもなくなってるんだけど。


次は大野さんの出番。


いったいどうするんだろう?
と思っていると、場内の照明が全部消えた。


暗転。


さらにざわつく客席。


音楽が流れ出すとともにステージ中央にスポットライトが当たり、大野さんの姿が浮かび上がる。


ゆっくりと歩き出す。


たったそれだけなのに、ピンッと緊張が走り場内が水を打ったように静まり返った。


そして踊り出す。


それはまるで宙に浮いているような重力を感じさせないダンス。


それでいて高い跳躍、目にも止まらない足捌き。


かと思うと、たっぷりと間を取る。


ゆっくりと指を降ろすと、客席は一斉にその指の先に魅入る。


しかも、躍りと一緒に場内に響く伸びやかな歌声。


"大野さんって歌いながら踊るの?"


そっと松潤に聞くと


"そっ、これが大野さんスタイル。相変わらずカッコいいな"


やっぱり小声で答えてくれた。


白のシャツにネクタイ、黒のパンツ・ストライプのジャケット
そんなに凝った衣装じゃない。
ステージもピンスポット一つ。
なのにこの上なく豪華に見える。


大野さんのダンスがそう見せているんだろう。


圧倒される。







やがて闇の中に大野さんの姿が消え、ステージが暗転に戻ると、息をするのを忘れていたような場内にも生気が戻る。


途端に起こる大喝采に「大ちゃーん」の声。
それは男女問わずで


「すごい人気だね。
大野さんって大ちゃんって呼ばれてるんだ」


「智くんは絵のファンも多いけど、こっちのファンも多くてね。
多才な人だから」


翔ちゃんはちょっと困ったように言うけど、その顔は嬉しそうで誇らしそう。


好きが溢れてるよ翔ちゃん。


「ほらニノのステージが始まるぞ」


翔ちゃんは照れ隠しのようにステージを指差した。


「今回の曲、ニノが作詞してるんだよ。
直前まで直してたって智くんが言ってた」


「ニノも歌うの?」


「もちろん、大野さんの弟子だからね」


「俺、ニノの歌聞いたことないよ」


ますます楽しみ!


俺はワクワクしながらステージに目を凝らした。










つづく