翌日、授業が終わるとニノは着替えるために一端家に帰った。


さすがに俺の服じゃあブカブカすぎてカッコ悪いって。


というより、俺の服を着た姿を松潤に、さんざん弄られてキレたんだ。


「二度と相葉さんの服は着ない!」


と宣言された。
残念、ニノが俺の服を着ると彼シャツみたいで可愛かったのに……
だから松潤に弄られたんだけどね。





ニノを待っている間に、俺は翔ちゃんから小市さんと話す時に必要な書類を受け取った。


翔ちゃんが、良かったなって言ってくれて、俺は迷惑かけてゴメンねって謝った。





ニノと二人で小市さんの家に行くと、奥さんがにこやかに迎えてくれた。


通されたのはダイニングテーブルで、小市さんはそこでもう晩酌を始めていた。


俺たちに気付いた小市さんは、昨日の厳しさが嘘のように優しく声をかけてくれた。


「いらっしゃい、こんな所で悪いね。
いつもより早く仕事が終わったものだから、君達を待ちきれずに始めてしまったよ」


小市さんがご機嫌にビールの入ったグラスを掲げた。


「そうよ。大事な話は早く終わらせてしまわないと、この人酔っぱらってしまうわよ。
あ、あなた達お夕飯は?」


キッチンで立ち働きながら言う奥さん。


済ませて来ました。という俺たちの返事に、
あら、残念。とちょっと大袈裟に肩を落とした。


「とにかく話を済ませてしまおう」


小市さんが隣のソファーに移動して手招きをしたので、俺はカバンから書類を取り出した。


話の内容は、量や価格、入荷の日にちもすでに決まっていて、それらの確認と受け取り責任者が俺になるということの確認位だった。


と、いうことは、小市さんと俺の信頼関係が出来ているかが大事だということで、俺のやらかした事の重大さを改めて思い知る。


昨日の今日だし、本当に小市さんは俺に任せてくれるのか不安になった。


不安が顔に出てたのか、そんな俺に奥さんが楽しそうに


「この人ね、昨日のあなたの姿を見て、彼は根性があるって。
頭の下げかたも礼儀正しくていいって。
根性だとか、礼儀だとか、古いわよねー
でもね、いたくあなたのこと気に入っちゃってるから安心して」


「これ、やめなさい」


小市さんがちょっと恥ずかしそうに奥さんを諌め


「根性論ではないが、わたしが観る限り君は元来真面目で誠実な人柄なのだと思う。
まぁ、少しおっちょこちょいだが」


ニヤッと笑って俺を見る。


俺は思わず肩をすくめてうつむいた。


「そこは、隣の二宮君がフォローしてくれるんだろう?
君は冷静で頭のいい人だとわたしは見るが」


「コイツがもうヘマをしないよう、しっかり見張ります」


小市さんとニノが同時にフフッと笑いあっている。


俺を肴に仲良くなってる……


まぁ、自業自得だからしょうがないか……


ひととおり話が終わって書類をしまうと


「ね、よかったらこっちに来てこの人の晩酌に付き合ってくれない?
お夕飯は済ませても若いんだから少しくらい入るでしょ?
おばあちゃんの作った家庭料理しかないけど、食べていって」


と、奥さんが今までキッチンで作っていたものをどんどんテーブルに並べだした。


イワシのつみれ鍋、きんぴらごぼう、カボチャのあんかけ、オクラのナムルにセロリの浅漬け……


どれもすごく美味くて、ハンバーガーを食べていたのに、ニノと二人でどんどん箸がすすんだ。


まだお酒の飲めない俺たちは、最後はご飯までよそってもらって、腹がパンパンになるほど食べた。


小市さんも奥さんも、若い人の食べっぷりは気持ちいいと喜んでくれた。


食べながら大学の話をしたり、小市マートの話を聞いたり、時間を忘れるほど話し込んだ。


二人ともとってもいい人でものすごく楽しい時間だった。


帰るときも二人で門まで送ってくれて、奥さんは


「またいらっしゃいね。
今度はあなたたちの好きなものを作るから、一緒にご飯食べましょうね」


って言ってくれた。












つづく