side   N


翔ちゃんの話を全部聞かずに相バカが部屋を飛び出して行った。


まったくアホなんだから。


テーブルに残された袋を覗くとこんなにどうするんだよって量のコーヒー。


まだあったかい。


アイツがみんなにって買って来たんだから、飲もうよってみんなに配って回った。


翔ちゃんのところに持っていくと


「雅紀、大丈夫かな?」


「さあ、どうだろうね。オレに聞かないでよ。
翔ちゃんはどっちを心配してるの?」


「どっちもかな。
小市さんとの契約も気になるけど、もしそれがうまくいかなかった時の雅紀の受けるダメージも心配」


「不首尾にに終わったら相当なダメージを受けるだろうね。
なんたって真っ直ぐバカだから。
だけど、そうさせないために今走ってんじゃないの?」


「雅紀のことよく分かってるじゃん」


翔ちゃんにニヤニヤされてちょっとムッとした。翔ちゃんもアイツがの味方かよ。
まったく、人の気も知らないで。


「アイツが分かりやすいだけだよ」


オレは人肌になったコーヒーをイッキ飲みするとパソコンに向かった。




そのあと、どうなっているのかアイツのことが気にはなっていたけど、今日中にやらなきゃいけないことがあって、オレはパソコンの前から動けないでいた。


そのうちに雨が降りだした。


雨はみるみる酷くなって、まるでスコールのようになった。


アイツ、何にも持ってなかったよな…


自分の失敗、家にいない小市さん。
アイツのことだからきっとまだ小市さんの家にいる。


もし外だったら


 この雨の中ひとりで


そんなことが頭の中をぐるぐると回っていた。


だけど、自分のやるべき事はきちんとやる。


やっている、つもりだったんだけど、実際オレの手はさっぱり動いていなかったらしい。


結局、ここはいいからと翔ちゃんに追い出された。


ご丁寧に傘まで二本持たされて。


部屋を出たオレはたまらずに走り出していた。


外に出る。


どしゃ降りじゃねーか。


翔ちゃん、傘なんか役に立たねーよ。


雨は冷てぇし、濡れて気持ち悪りぃし。


だけど、ずぶ濡れで縮こまってるアイツを見た時、ホッとしたんだ。


雨の中に並んで立って、バカじゃねーの!
って思うのに、そんなことが悪くないって思っちゃったんだ。


オマエの部屋でオレを心配して気を使うオマエが、ホントはまだ自分のした事が許せなくて落ち込んでるのが分かったから…


だから、まだ終電には時間があったのに帰れなかったんだよ。


オレには三年も想い続けた翔ちゃんがいるのに。


忙しい翔ちゃんに仕事を押し付けて出てくるなんてあり得ないのに。


バカみたいに真っ直ぐで、バカみたいに一生懸命なオマエを放っとけないんだ。




ベッドの中でピッタリくっついて、オマエのぬくもりを感じて……


身体は泥のように疲れてるのに……


寝れねーよ。


悪かったな起きてて。


何でかなんて、オレだって知らねーよ。


オレが手を伸ばすと、黙って目を瞑って撫でられているオマエ。


ふふ、子供みてぇ。


全部をオレに委ねてる感じ?


オレの手はそんなに安心出来んの?


だったらずっと撫でててやろうか?


こんなのも悪くないって思うって、可笑しいよね、なんでだろうね。


だけど、やっぱり身体は限界で、いつの間にかオレはオマエの腕の中で眠りに落ちていたんだ。









つづく