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油断した!

オレとしたことが!


冷静になればわかった事なんだよ。

何でこんな簡単な罠に嵌まった?


いつも周りを見ていた。注意深く。

相手によって接し方を変えた。

よく人の懐に入るのが上手いとか言われるけど、他人の懐に入って相手の情報や感情を引き出しても、自分の懐には入れない。

オレが気を許すのは、本当に信頼出来る極限られた人だけ。


だから、危なそうな所からはいち早く離れる自信があった。


なのに、


何だ、これは



最近はいつも相葉さんがオレの周りをうろちょろしていたから、一人じゃなかったから警戒心が薄れていたのか?


アイツのせいにするわけじゃないけど、あの能天気な顔を見すぎて確かに気が緩んでいたのかもしれない。


だけど、今日は一人だった。
相葉さんはいなかった。



いくら大野さんの名前を出されたからって、ノコノコ付いてくるなんて、


オレはバカだ。
バカすぎる。





結果、オレは今無人の体育館のステージ横の薄暗い準備室で持川に羽交い締めにされている。


今日はここは工事が入っていて学生はいない。
工事業者は食事休憩のはずで、一時間は帰って来ないだろう。


その時間に合わせてオレを呼び出したってことは計画的か。




オレの前には平井が、暗い炎を燃やした目でオレを見下ろしている。


「何のまねだよ!」


オレはその目を睨み返した。


「やっぱり、一発殴らないと気が収まらなくてさ。

江口はいい仕事してくれただろ?」


「江口もグルか?」


「ふん、江口はただの使いっぱしりさ。
あいつは本当にお前を呼び出したのは大野さんだと思ってるよ」


圧倒的に有利な立場にいるせいか、目の前の平井は薄ら笑っている。


「当たり前のこと言われて逆恨みかよ。
つくづく小せぇ野郎だな!」


あー
黙ってればいいのに、つい余計な事を言っちまう。これで、一発が二発になったな。


案の定、平井から笑みが消えた。







つづく