その時、大野さんがほんの少し身動ぎした。


体が揺れた反動で、カチャリと音を立てて、大野さんのペンケースが地面に落ちる。


すると翔さんの手がすっと伸びて、それを拾い上げ元の場所に戻した。


大野さんの

「ありがと」


という小さな声に目だけで微笑み、大野さんの顔をじっと見つめた。


「智くん、熱があるでしょ。ここのところ忙しかったからね、風邪引いたかな。風にあたらない方がいいね」


と側に置いてあったブランケットを翔さんが大野さんに掛けてやっている。



「そうかな?自分じゃよく分かんないや」 



「目が潤んでるよ。寒気しない?」



と大野さんの胸の前で合わせて、その体をすっぽりと包み込んでしまった。


そんな些細なことなのに、俺は思わず目を目張った。


翔さんはきっといつも、どんな時も大野さんを目の端に入れている。だから大野さんのどんな些細な変化にも気付けるんだ


そして、大野さんもそれがわかっていて感謝して、大野さんもまた翔さんのことを気遣っている。


きっと二人の時間の中で培ってきたんだろう、献身と信頼。


こんな出会って間もない俺にだって分かる、二人の絆の強さ。


ニノ、ニノは本当にこの二人の間に 入りたいの?


この二人に入り込める隙間なんて無いじゃん。


ニノが辛いだけなんじゃないの?




だけど

好きなんだよね。


俺、分かるよ。


俺だって、全然相手にされてないけど、本気でニノのこと好きだから。好きな人に相手にされないからって、ハイそうですかって諦めるわけにはいかないよね。


だけど、翔さんと大野さんを見てるニノも、そのニノを見てる俺も


やっぱり、辛いよね……






つづく