私のアパートはいいように言ったら、
ソーホーの東、
ノリータの南、
リトルイタリー。
正直に言ったら、チャイナタウン、だ。

大家はチャイニーズ。マネジャーは眉がいれずみになった
推定60歳のおばあさんに近い女性。女傑といっていい、
でかい声で、相手を圧倒しつつ、押せ押せパワー全開でしゃべりまくる。

昨日、家賃を持って、小汚いオフィスに行った所、
ベルを押せども返事がない。
行くと伝えてあったのに、変だなと、内側に耳をすませば、
あの女傑、どうやら他の電話に出てて、ドアを開けられそうにない。
話は長そうだ。っつか、彼女が一方的にしゃべりまくっている。中国語で。
でも待ってもいられないので、再度ベルを押したら、アシスタントらしい
女性が出てきて、「ちょっと待ってくれ」という。
外で待つ間、女傑のとめどない圧倒的中国語を聞かされる。
意味はわからんが、なんか興奮している内容。
と、今度は興奮がヒートアップして、泣き声が聞こえてきた。
ええ、あの女傑の?あの人が泣いてるの?
アメリカの不況で不動産業にも影がかかってきたか、
それが、泣くほどのことって、一体、何?

と思ったら、ほどなくして、中に通してくれた。

「家族の問題でね」、と一言。

いつもの女傑らしくない、縮こまったような彼女がいた。
この人、強そうだけど、家族の事で泣く、1人の人間なんだ。

「私も父が80すぎててね。問題があったら日本に帰らないといけないよ」
と言ったら、
「おおー」と同調を意味する返事が返ってきた。

過去11年、いつもいつも引っ越したかったチャイナタウン。
ま、でも悪いことばかりじゃないか、と思えてきた。