藍色の空が辺りを覆う頃、私は闇に溶け込むようにして家を飛び出した。


 

 ――いや、家と言うのは少し違うかもしれない。


 だってあそこは、私の家じゃない。私の大好きな家族がいた家じゃない。

 今、私が暮らしている場所を家だと認めてしまったら、この思い出はどうなるのだろうか?


 

 春の夜風が肌をさす。

 けれど私は引き返さず、まだまだ体に馴染まない、空と同色のセーラー服をなびかせて走り続けた。


 外は寒いし、視界は悪いし、いいことなんて一つもない。

 それでも、母の妹だとか、その家族が暮らしている場所にいるよりはずっといい。あそこは、私にとって身が凍るかと思うほど冷たく、視界に映すことさえ嫌な物ばかり溢れている。



 ……帰りたくない。


 でも、やっと中学生になったばかりの私でも、そんなことは無謀だと理解していた。

 はぁーとため息をつき、今だけは嫌なことは頭の片隅に追いやった。




 キッと前方を睨むようにして見れば、目的地まではあと少しだった。

 どこかから鳥の鳴き声と、コポポッ……と、水が流れる音がした。


 じーんと胸の奥が熱くなる。

 歪みはじめた世界の中で、だけど足だけはしっかりと動かす。


 ギュッと目を瞑り、草をかき分け突き進めば、求めていた水の気配がむっと漂った。



 着いたんだ。

 そう、今更ながら思った。




 火照る体には、夜風は涼しく思えるほどで、私は呼吸を調えるために深く息を吸う。

 水分をたくさん含んだ空気は肺までキッチリ届き、私に懐かしさと安心を与えてくれた。


 周りに誰もいないことを確認し、もう一度息を胸いっぱいに吸い込む。


「……私、中学生になったんだよ?」

 言葉と共に、一粒の光が零れ落ちた。

 それは紺の世界には眩しいほどで、とめどなく溢れては地面に消えてゆく。


 何度かしゃくりをあげそうになりながら、私はぐっと堪え、地面の先を見つめる。

 ――そこには、星空があった。



 だけどそれが本物でないということは、そこに浮かぶ無数の桜の花びらと、仰げば見られる本物の星空が教えてくれる。



 なら、これは何?

 そんなわかりきった答えを、私はあの頃と同じように胸の中で呟いた。 



『これはな、夜桜だっ』

 そういったのは、忘れもしない父。

 それを聞いて『ふふっ』と笑い声を立てたのは母だった。



 ――忘れもしない六年前のこの日。

 夜桜を観に行こうという父の提案で、私はこの場所に来ていた。

 その時は、桜の木なんてあたりに一本も生えておらず、なぜこんなところに来たのかと不思議でしかたなかった。


 しかし、困惑の表情を浮かべていたであろう私に、父は鼻高らかに『ここは父さんしか知らない穴場だったんだぞ』と言い放ったのだ。

 あの時は、花見の席が取れず、ただの負け惜しみで言っていたものだとばかり思っていたが、今ならなぜ父がここが穴場だと言ったのかよくわかる。



『ここはな、いつでも綺麗な桜しか見られない場所なんだぞ。それに、首を痛めることもない。なんせ――』



「無理に顔を上げなくても、夜桜が見られるんだから……」

 とんだ屁理屈だと母は笑った。

 私も、何を言っているのかと呆れた覚えがある。



 だけど、今になって父が言っていたことは本当なんだと気が付いた。


 なぜなら、ここには散って変色した桜の花びらは一つとして浮かんでおらず、また、星空もちゃんとある。

 そりゃ、川なんだからいくら花びらが散っても流れていくし、水なんだから空だって映すだろう。



 くだらない、そう感じても、今は自然と笑みがこぼれた。

 この場所には突然の衝動で来てしまったようなものだが、それでも正解だと思った。


 また、私を囲む周りの環境に耐えられなくなったとき、ここに来てみるのもいいかもしれない。



 思い出の場所は、私を独りにはしないだろうから――










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なんだか無理やりな話になってしまった(^▽^;)

そしてまだブランクが……!


いつもこのブログを見て下さっている皆様は、突然のことで驚かれたかもしれませんが上記の小説(というのもおこがましいもの)は、私が参加させていただいているグルっぽのお題で書いたものだったりします。


途中から、なんだか桜がお題みたいな流れになっていますが、お題は間違いなく『星空』『光』『孤独』です。

ただ、私の文章力がお粗末なだけで←

でも、「星空」の文字をみて、ブログ名にも使ってるくらいだから、これは書くっきゃないだろうと((


お題から小説を作り上げることは初めてだったので、たくさん自分の至らない点を発見できました。

それと同時に難しさも痛感しました(ノ_・。)



次はもっとマシなものを書けるように精進しますっ。


ここまで見て下さった方、ありがとうございました。