3-4.機屋:小島さん
機屋では図案にそって染(直接染色法)や糸の括り(絣括り法)、反物の織を行っている。
その中でも小島さんは代々機屋であり当代で3代目、伝統工芸士の認定を受けている。この仕事を始めて30年位になるが、40代の職人がいないため業界内では50代はまだ若手といわれているが、後継者がいないため今後どうするかは不明とのこと。
3-4-1.直接染色法とは
縦糸に図案に柄として現れる部分を直接染める手法。
大体80~100本に束ねた縦糸を台に固定し、ヘラと呼ばれる薄い金属の棒に付けたインクを均等に刷り込む。ヘラの染色部には水糸と呼ばれる糸(テグスのようなもの)が巻いてあり毛細管現象を用いてインクを吸い上げ、保持している。
こちらは括りと違い一度付けると修正が効かないため、とても神経を使う作業であるとのこと。
この手法の場合、柄にもよるが1反分を全部染めるまでおよそ1年かかる。
3-4-2.絣括り法とは
重要無形文化財に指定されている工程の一つであり、縦糸に図案に柄として現れる部分を糸で括り、染を防ぐ手法である。また、括るものが緯糸の場合は完成品を緯絣と呼ぶ場合がある。
基本的に両手を使い束ねた縦糸に掛け糸を二重にきつく巻き止める。
この際、力をかけるため糸の片方を咥え作業を行うが、ここで掛け糸が湿気を含むことで括った時によりきつくすることができる。
掛け糸は一般的には綿糸を使用するが、この工房では柄により太さの違う2種類(太:綿、細:ポリ)の糸を使い分けている。
この手法で亀甲柄を作る場合、織上りの亀甲の(柄の細かさの単位。反物幅に入る亀甲の数を指し、80/100/160/200の数字が大きくなると柄が細かくなる)の倍の数を括ることとなる。
3-5.縞屋:小倉商店
問屋でもあるが織子も複数名おり、普段は織物体験なども行っているそう。
3-5-1.織機について
居座機もしくは地機(じばた)と呼ばれる古くから存在する形状の織機を使用。
一般的な織機は高座型で織終わっている部分を巻き取り固定しておくことで縦糸の張りを保つが、地機織では巻き取ったものを織子自身の腰に固定し、体を織機から離すようにして調整することで縦糸の張りを保つ。
また、2つの杼(ひ=シャトル)を用い、交互に渡しながら織り上げていく。ここで使用される杼は通常の物の他に、小管(ボビン)が搭載されている点においては共通しているものの、一般的な物が15cm程なのに対し、およそ55cm(反物の幅以上)あるものが使用される。これは横糸を通した後、一般的な高座型と違い、筬での打ち込みを行った後、更に追加して杼で打ち込みを行うためである。この特徴的な杼は大きさと素材が樫であることもあり、重量も600g(糸除く)とかなり大きく、形状から刀杼とも呼ばれる。
実際に地機を使い反物を仕上げる場合、柄にもよるが1反につきおよそ7h/d×3M掛るとのこと。
4.感想及び考察
以前より結城紬の生産工程の簡単な流れは知っていが、直接専門の方々に説明を聞くことで、絣叩きの手法や直接染色法、地機の構造など、知らなかったことを詳しく教えて頂けて勉強になりました。
また、絣叩きについてはその他の藍染などに見られるような、叩き染(糸を叩く)の手法とは違い、糸を叩きつけるという手法に関して実際にデモンストレーションしていただけたので、違いがとても分かりやすかった。直接染色法についても、実際に作業させていただけたことで、作業の繊細さや手首で糸を固定するコツ、ヘラに含ませる染料の調整の難しさなどが実感できた。
その中でも、全体を通して一番感じたのは生産者の高齢化と後継者不足であった。今回伺った中でも、小島さんの所では後継ぎがおらず今後は不明、整理店は結城全体で最後の1軒とのことであり、結城紬の今後を考えると大きな課題と言えよう。この問題は結城紬だけでなく着物の生産や伝統工芸全体としても言われている。特に、結城は立地の関係上、公共交通機関が利用しにくく主要道からも少し外れているため、観光地化もしにくいことから外部からの新規従事希望者が増えにくいと考える。また、伝統工芸などは技術習得に年単位が必要であること、将来性の不安、収入やその業種への就職方法が不明といったことが希望者にとって二の足を踏んでしまう理由であると思われる。
これらを鑑みて、結城紬を今後に繋げていくために一般人にできることは、結城紬や和服などの一般知識や伝統工芸などを各家庭で教えていくことと考える。また、生産地及び和服業界として考えるならば現状で既に行われている事、様々な制約があり難しい事もあると思われるが、産学(できれば公も)連携、若年層向けコンテンツとの提携(参考例:京友禅×刀剣乱舞-ONLINE-)、類似的イベント(例:デザインフェス)への参加、交通アクセスの良い場所に展示施設・スペースなどを設ける、当該職種における説明やどうしたら従事できるか等が誰でも簡単に知ることのできるコンテンツの作成(余力があれば大人、子供向けなど対象ごとに作れると良い)、着物は高級嗜好品というイメージの払拭、各生産地近隣の学校に対する社会見学の提案などが挙げられる。(学校教育については様々な論がある為割愛) この中でも特に産学連携、コンテンツ提携は若年層の目に触れる機会も多くなり、興味を引くことができる大きな機会となるであろう。特に産学連携はその分野に興味がある学生が多く従事希望者を増やすのに役に立つであろう。また、現在ある公式コンテンツ(文化庁や結城市公式HP)において、結城紬について詳しく記載されているが専門用語が多く子供には理解しにくいと感じたので用語集などが記載された解説込みのHPがあると教育などで使いやすいのではと考える。
将来結城紬が途絶えること無く続いていけるよう自分に出来る範囲ではあるものの試行していきたいと思う。
5.関係資料参照元
文化庁http://www.bunka.go.jp/index.html
国指定文化財等データベース https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index_pc.html
文化遺産オンライン http://bunka.nii.ac.jp/
結城市公式HP http://www.city.yuki.lg.jp/page/page001668.html
小倉商店 http://www.yuukiogura.co.jp/index.html
『刀剣乱舞-ONLINE-』×Super Groupies https://www.super-groupies.com/special/tourabu_kimono/
DESIGN FESTA https://designfesta.com/