生きている限り、人には寿命があって
いつかお別れの時がくるのは当たり前で。

そのお別れを実感させられるものの一つが
それまで、出入りさせていただいていたお店やお家の
取り壊しだったり、看板の名前がいつのまにか
違うお店に変わっていることだったりします。

あるブティックさん。
80代のオーナーさんは、それはそれは粋でおしゃれで
なんでもよくご存知の素敵な女性でした。

お店の商品は、有名な作家の方々の作品や
上質で品格のある本物ばかり。
お話についてゆくために、わたしもいろいろ勉強しました。

実はわたしが中学生の頃からの顔見知りの方。
孫のようにかわいがってくださり、
起業を後押しするかのようにずっとコレットを
ご利用くださいました。

「このお店で死ねたら本望よ」と笑ってらっしゃったオーナーさん。
きちんとお別れのご挨拶ができなかったことが心残りです。

おしゃれだったお店は、いつのまにか看板が変わり
もうおじゃますることもなくなりました。
季節を彩ってきたウィンドウ、おいしいコーヒーをご一緒させていただいた
小さなテーブル、新しい商品が並んでいた大きなガラステーブル。

「味がわからなくなってきて、何を食べてもおいしくないの」
そうおっしゃりながら、お好み焼きをごちそうしてくださり
「今日はおいしいわ」と、微笑まれたかわいい笑顔が忘れられません。

もう、すべて思い出でしかないのだなあと、近くを通るたび
切なさがこみあげるこの頃。
広告というモノを扱いながら、実は人とつながらせていただく
温かいこの仕事が、やっぱりわたしは好きなのです。