それは七年前のこと。
多分五月の終わり頃の夕暮れ時。
病院の屋上で娘と二人。
太陽が大きく西に傾きかけた頃、1日のうちで空が一番ドラマティックにその姿を変えていく時間なのに。。
「夕焼けだよ」
私が話しかけても、車いすの娘は口を固く閉じたまま一点を見つめるだけ。
「ほら、きれいだよ」
「・・・・・」
「やまの形がはっきり見えるね」
「・・・・・」
「もう星も見えるんじゃない?」
「・・・・・」
何を言っても娘の視線はどんどん足下へ落ちていくばかり。
突然の大けがで長引く入院。
でも、根っから明るい彼女は入院生活にもすぐに慣れリハビリも頑張っていた・・・ように見えた。
その日、病棟で仲良くなったユウタ君の一足早い退院が決まった。
みんなで喜んだ。
「退院してもまた遊びに来てね。でも、戻って来ちゃだめよ」
なんて言いながら。
娘もユウタ君の退院を喜んでいた・・・ように見えた。
あの日刻々と変っていく夕空を見ながら
幼心にどんな思いが横切ったのだろう。
焦り、不安、孤独。
「家に帰りたい」ってつぶやくのが精一杯で、涙をこらえた横顔が忘れられない。
夕日が山の向こうに隠れる頃
「ここにいたんだ~~(笑)」と
仕事帰りに病院に来てくれた夫の声に
こらえていた想いが一気にあふれたのは私。
「夕ご飯来てたよ。部屋にもどろう」
小さくうなずいた娘と、車いすを押す夫。
後ろ姿を見ながら、「涙よ、出るな」と必死だった。
あの日見た夕焼け、まばらな星、前橋の街の灯り、娘の横顔、夫の背中。
我が家の歴史の1ペ-ジが、ふとよみがえった。
ただ、それだけ。
どこか懐かしいメロディ-はそれぞれの中の切ない想いを連れてきてくれる。
もう一度聴こう。
そして笑おう。
優しい歌に巡り会えて良かった。
「太陽のメロディ-」にはそんな力があると信じている。