小雨の降る中、家の近くの喫茶店に行った日のこと。



コーヒーのSサイズを頼むと若い店員がレジを打つ。

店長らしき人が俺にコーヒーを作ってくれる。
俺は、この人の感じのいい雰囲気が好きだ。




ひとつだけ空いた席に腰を下ろすと、脇でおっさんが勉強している。
おっさんというより、おじいさんかもしれないくらいの年。

スペイン語だ。

綺麗な筆記体で大学ノートにぎっしりと書き込んである。
2,3年前の自分をイメージに想った。
そんな風に、単語書いてたっけなって。
そんな風に、楽しそうな目してたかなって。


気になった俺は聞いてみた。

春からアンダルシアへ長い旅行に行くらしい。

一か月もしないうちに、一面に咲いた向日葵が見られるんだ。
そのおじいさんは目を細くしてくしゃっとした笑顔で言った。

話してると、おじいさんの携帯電話が鳴った。待ち合わせの時間だろうか。
おじいさんは、それでは、と言い軽く会釈をした。
もう少し話を聞きたかったけど、俺も同じように頭を下げた。

ハンチングを頭に乗せたそのおじいさんにまた会えたらいいなと思った。



次に隣に座ったのは隣に座る男女の関係は脱サラフリーターの男と保険販売員の女。

その女の話し方。

あまり聞きたくない話をしていたが、あいにく他の席はすべて埋まってて移動できなかった。
仕方なく、無理に自分の動作に集中してみたけど。


自分が聞きたいのか、聞きたくないはずなのに、耳に入ってくる。



28歳のその男は、10年後のことを考えて生きている。
自分のことをよく理解している。
やりたいことを自分の中に持っている。




そして保険の販売員であっても、目の前に話相手がいる。



数十分して彼らは出ていった。



次に隣に来たのは、若い女の子。
喫煙席しかあいてないのだろうか、彼女は煙草を一本も吸わないでずっと本を読んでいた。
あるいは、何か考え事をしてたのかもしれない。


考えすぎだかは分からなかった。けど、そう思った俺は煙草を消して外に出た。

外に出ると小雨は止んでいた。


俺はメンチカツとササミカツを買って家に帰った。