👇一部抜粋
三浦春馬さんや、織田信長を演じる
松山ケンイチ(36才)らの存在も欠か
せない。2人は先述の俳優陣と比べ
るともはやベテランの域。
物語に緊張感とダイナミズムを与え
る重要なポジションを全うしている。
奇想天外な物語や引く手数多な若手
俳優がこぞって出演していることなど
多角的に注目の集まる本作。中でも
一番の見どころはやはり
新田演じる主人公・蒼と三浦
さん演じる元康の関係だ。
ここに胸を熱くさせた観客が
圧倒的に多いようで筆者も
その一人である。
本作において元康は主人公
を“導く”立場にある。昨年末
に公開された映画『天外者
(てんがらもん)』で三浦さん
が演じた五代友厚は、どこか
三浦さん自身と重なるキャラ
クターであった。今作の元康
もまさにそう。常に前を向き
未来への希望を後続する者
たちに託そうとする存在なの
だ。本作での三浦さんは俳優
として、これからさらに成長し
ていく後輩たちを激励するよ
うなポジションにあると思う。
三浦さんと元康との重なりを
感じずにはいられない。
本作での新田は、主役でありながら
非常に頼りないのだが映画『サヨナラ
までの30分』(2020年)などで自信に
満ち溢れたエネルギッシュな人物も
演じていることから見ると正反対とも
言える蒼役は新田の演者としての
技術の高さを浮き彫りにしたように
思う。単に萎縮した人物を演じている
のではなく視線の揺れやわずかな声
の震えで自信のない人物像を体現し
ているのだ。序盤で見せる蒼の憂鬱
そうな表情が次第にリーダーとしての
顔つきに変わっていく過程は見逃せな
い。そのきっかけを与えるのが、三浦
さん演じる元康である。
元康が蒼に希望を託す
シーンは、リアルな三浦さん
と新田の関係とも重なって
見えて、感涙必至だ。元康は
この時代をけん引する存在で
あり三浦さん自身もそうだった。
彼がエンターテインメント界
の中心に立ち、その先頭を
走り続けた存在だったことは
広く知られている。
三浦さん自身を思わせる元康
の“想い”を、全力で受け止め
る蒼役の新田。彼もまた、これ
からのエンターテインメント界を
切り拓いていく存在となるだろう。
本作での2人の演技から、そう
感じさせる“バトン”をはっきりと
目にした人は、筆者だけではな
かっただろう。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優
文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画
の劇場パンフレットに多数寄稿のほか
映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」では
MCを務めている。
